三井住友信託銀行とみずほ信託銀行において、株主総会の議決権行使書の集計方法に誤りがあったことが判明した。影響は、2行合計で1346社もの上場企業に及ぶ。上場企業のコーポレートガバナンスの根幹を揺るがしかねない事態を招いていたことで、信託銀行に不信の目が向けられている。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
三井住友信託とみずほ信託で集計方法に誤り
約3割の上場企業1346社に影響及ぶ
「今年の分の議案の成否に影響はないというものの、かつて旺盛だった旧村上ファンドが仕掛けた議案のように、1票の議決権を取り合って否決となったものはどうだったのか」
あるファンド関係者は、そう怒りをあらわにする。向かう矛先は、三井住友信託銀行とみずほ信託銀行という二つの大手信託銀行だ。
9月24日、三井住友信託とみずほ信託はそろって株主総会の議決権行使書で不適切集計が行われていたと発表した。集計作業を担っていたのは、両行が共同設立して集計作業を再委託していた日本株主データサービスだ。三井住友信託の証券代行子会社でも同様の誤りが発覚し、件数は三井住友信託側で975社、みずほ信託側で371社の合計1346社。実に3割を超える上場企業に、影響が及んでいたことが明らかになった。
そもそも、ここでいう不適切な集計方法とは、同社で行っていた「先付け処理」という特殊な作業に起因するものだ。
今年はコロナ禍の影響で延期した企業もあるが、上場企業の株主総会は6月頃に集中している。この時期は大量の議決権行使書が郵送で送られてくるため、長年の間、日本株主データサービスは郵便局と協議の上で、本来同社に行使書が届くより1日早く郵便局から書類を受け取っていた。
こうして繁忙期の事務負担を軽減していたわけだが、この集計方法に“穴”が生じていた。
民法では、企業に届いたタイミングで行使書の効力が発揮するが、一連の先付け処理では、本来は期限日を1日過ぎた後で企業に届くはずだった行使書も期限内に受け取っていた。
集計の現場では、この本来ならば期限切れの行使書を集計結果に入れていなかったのだが、改めて前述の法制度に照らし合わせて外部の弁護士を交えて検証したところ、結果に含めないのは不適切だと認められたのだ。