銀行の未来の姿に光を当てる連載『銀行の近未来』。三菱UFJ信託銀行に長島巌社長が就任した。前社長からの宿題である資産運用業務の買収戦略に加え、信託銀行が事務を支える株主総会のバーチャル化という新たな潮流が出ている。こうした課題を新社長はどう乗り越えていく考えなのか。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
三菱UFJ信託銀行に新社長が就任
運用残高100兆円目標を「考え直す」
――注力分野に掲げる資産運用業務について、池谷幹男前社長の時代には、1兆円規模の買収を仕掛けてAUM(運用資産残高)で100兆円、グローバルランキングで15位を目指すと掲げました。昨年には、豪州大手銀傘下の資産運用会社を約3000億円で買収し、FSIと名称を変えて統合プロセスを進めています。今後の課題はどう考えていますか。
例えばFSIは買収前の親会社のシステムを使用しているが、そのまま使うことはできない。また買収した次の日に新しいシステムに変えられるわけではなく、リプレースに1~2年かかる。FSIはこのプラグをつなぎ替える作業の真っ最中であり、成功させないといけない。
また現在は、FSIの経営陣と株主である私たちで、来年からの新中期経営計画に盛り込むための成長戦略や事業戦略をつくっている。具体的には、どういった資産にまで運用を拡大するか、それをオーガニック戦略で進めるかそれとも他の企業やチームを買収して行うか、といったことだ。今後、グローバルなアセットマネジメント戦略はFSIをコアに発展させていく。いきなりもう一度、3000億円規模の買収を行うことはない。
――FSIの買収シナジーはどの程度出ているのでしょうか。
シナジーは、今まさにこれから連携を進めようとしているのでまだ出ていない。FSIが持つ運用商品を日本の顧客に届けて、私たちの日本株やアジア株のファンドをFSIの顧客に対して売れたらいいと考えている。ただ、連携は始まったばかりなので、しばらく待たないとシナジーは評価できない。
――FSIを子会社化したことで、三菱UFJ信託銀行の顧客だから受けられる独自の商品やサービスは出てくるのでしょうか。
最近、FSIが持つ海外の顧客の中で評判が良いのがインフラファンドだ。キャッシュフローが安定しているので、おそらく日本の顧客にも評価されるだろう。日本の投資家を分析し、成長分野だと思える分野を伸ばすように私たちから提案する。
――競合となる海外の運用会社の規模が大きくなり、100兆円のAUMがあればグローバルで15位になれるという前提条件が変わりつつあります。ここは軌道修正するのでしょうか。