次々と問題が発覚し、世間を揺るがしている厚生労働省所管の毎月勤労統計調査の不正問題。なぜ、このような問題が起きたのか、再発を防止するにはどうしたらいいのか。かつて総務省で政府の統計制度の所管部局にも在籍していた元官僚の筆者が解説する。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)
官庁統計の信頼を失墜させかねない
厚生労働省所管の毎月勤労統計調査
国の統計、いわゆる官庁統計に対する信頼が揺らぎ始めていることについては昨年、『「政府統計」で相次ぐ不祥事、データは本当に信用できるのか』において既に指摘したが、年が明けて、揺るがすどころでは済まない、官庁統計の信頼を失墜させかねない不正が明らかとなった。
厚生労働省所管の毎月勤労統計調査において、従業者規模500人以上の大規模事業所については、東京都に関し、本来は全数調査とすることとされているにもかかわらずサンプル抽出が行われ、およそ3分の1の大規模事業所に対してしか調査が行われていなかったことが判明したのである。
しかも、これは最近始まった話ではなく、平成15年に全数調査ではなくサンプル調査とするマニュアルが担当局内部で作成され、平成16年から続けられてきたという。
加えて、一昨年の平成29年にはそうした不正な調査方法に対応すべくシステム改修まで行われたのみならず、必要な補正を行うための基礎資料のうち平成16年から23年分が、紛失するか廃棄されるかして現存しないことまで明らかとなった(1月18日の閣議後記者会見における総務大臣の発言によれば、「毎月勤労統計調査の調査票業務の中に、集計に用いていた雇用保険データが保存期間、期限が満了し存在していないなどのため、平成23年、2011年以前の毎月勤労統計の再集計が困難であるとの説明があった」とのことであるが、真相やいかに?)。
さらに、こうした全数調査からサンプル調査への変更は、統計法第11条に基づき総務大臣の承認を受けなければならないこととされているが、当然のことながら承認の申請は行われなかった。