「そうさ。きみのもとで働いているすべての人は、自宅より職場ですごす時間のほうが長い。毎朝、彼らは家をでてここに出勤し、きみの夢をきずきあげるのを手伝っている。そのことを想像してみるといい――彼らは生涯最良の時間の一部をきみに提供しているんだ。その贈り物のお礼として、きみは努力し、なんとしてでも職場をふたたび人間味のある場所にしたらどうだろう。職場で働くのが楽しいうえ、成長し、学び、生来の創造性が発揮できるとしたら従業員がどうなるか、想像してみるといい。彼らの仕事が楽しくなることを優先事項にし、ノルマが重要な価値をもつ場所にその文化を導入したら、どうなると思う?その気になれば、きみはそれぞれのすばらしいホテルでそういった文化をつくりだすことができる。……

 自分は人が働いてビジネスをする特別な場所をつくりだしていると知ったら、どんなに励みになるか考えてみるといい。ちょっと認識を変えれば、自分のために働いてくれている人たちに奉仕することでその大義を発見できるだけでなく、きてくださる顧客一人ひとりになにができるかを考えたとき、大きな興奮と感情的なかかわりを生みだすこともできる。きみときみのチームの努力によって、美しい思い出をつくりだすことができる。……

 毎朝起きて、顧客に“忘れがたい経験”をしてもらうことに身をささげる姿を思い描いてみるといい。興奮するだろ?」

「確かに。しかも、そういった献身を深めれば深めるほど、興奮の度合いが高まるのがわかります。……“大義”と呼んでいるものがあなたを刺激して、エネルギーをあたえているのは明らかです」

「そうだ、ダール。大義からは、希望と大量のエネルギーをもらっている……マハトマ・ガンディーはかつてこういっている。“どんなにつまらないことをしなければならなくても、できるかぎりうまくやり、いちばん重要と思うものとおなじように注意と心遣いをしてください。なぜなら、そういったささいなことによって、あなたは判断されるのですから”。……

 職場でのリーダーという役割から私生活における父親役まで、あらゆることをこれ以上ないほど献身的にやれば、きみは日々を管理している方法にポジティブな誇りを感じはじめる。するとこんどは自尊心と自信が高まって、つぎはさらに大きなエネルギーと情熱が解き放たれる。このまえきみに話した“生きる欲”がはじまるんだ。自分自身がいい気分になれる。自分自身がいい気分になれる人びとは、すばらしい仕事をして、すばらしいものを創造する。で、つぎは、自分の長所の基準をさらに高くする。それは上方スパイラルで、人びとを右肩あがりのよろこび、意義、内面的やすらぎへと案内してくれる」