「そのとおり――とてもむずかしい質問だ。よくぞきいてくれた」明らかに上機嫌な口調でそういうと、ジュリアンはわたしのところまで歩いてきて、あたたかな笑みを浮かべながら背中をぽんぽんとたたいた。
「まず、もう一度いっておくが、いろいろな意味で、きみの疑問に対する答えはない。人間のレベル、わたしたちの理解力では理解できないことを、きみは理解しようとしている。だが、きみがきいているという事実は、きみは自分に適した人生哲学を深く究め、考えようとしていることを意味している。わたしのなかでも、それらはまったくの人生の謎であるといいたい部分と、きみがもとめているものには直感的に答えられるといいたい部分がある。……
最高の人生にたどりつける道については、多くのことが書かれてきた。至福という屋敷の入口はたくさんある。職場から家に帰るルートがいくらでもあるように、最高の人生、きみに運命づけられている人生にたどりつくルートも山ほどある。……本物の人生にたどりつこうとするとき、どのルート、どの道を選ぶかはきみしだいだ。ほかの道よりいい道というものはない――ちがって見えるだけだ。職場からいつもとちがう道で帰宅すれば距離が長くなって、でこぼこも多くなるように、ある道を行けば長旅になるかもしれない。べつの道をすすめば、高速道路を使い、雲ひとつない青空のもとをすいすい走るように、目的地に着けるかもしれない。すべてきみしだいだ。おもに、日々の瞬間瞬間でおこなう選択によって決まる。きみは人生の物語の共同執筆者なんだ」
「わかりました、ジュリアン、ひとつおききします。わたしたちの人生のために用意されているそのおおまかな基本計画にしたがって、運命づけられている場所へ高速道路でたどりつくには、どのように取り組めばいいんですか?」
「善をなし、善であれ」という単刀直入な答えが返ってきた。
「われわれのこの世界は、一連の不変の自然法則にしたがって動いている。世界をつくり、われわれをおくりだした、おなじ自然の力だ。サッカーのように、ルールを知らなければ試合はできない。まあ、人生も試合のようなものさ。試合をする、そして勝つには、ルールを学ぶことが欠かせない。ルールにそって人生をおくれば、人生はうまくまわるだろう。宇宙はきみたちに勝ってもらいたいんだ、知ってたかい?自分のやり方をはなれ、できるかぎりすみやかに試合のルールを見つけださなければならない。試合のルールを学ぶには、それなりの努力、静かな場所での熟慮、哲学者になる純粋な意欲が必要だ」
「哲学者になる?」わたしは耳を疑った。