東京証券取引所で今月1日に起きたシステム障害は、金融インフラの脆弱さを露呈した。菅政権が掲げる国際金融都市構想が後退しかねない事態に関係者は頭を抱えている。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
「システム障害は必ず起きる。重要なのは、起きてしまった“事故”を繰り返さないよう、いかに迅速な手当てができるかだ。今、海外の投資家はそこを注視している」。大手証券会社幹部が「事故」と語る出来事とは、10月1日に東京証券取引所で発生したシステム障害である。
同日朝、相場情報などを伝えるシステムの一部装置が故障し、同日の株式売買が終日停止された。1999年の全面システム化以降、株式全銘柄の取引が終日停止されたのは初の失態であり、約3兆円規模の売買機会が失われるなど市場に大混乱をもたらした。
翌2日に市場は正常化したが、冒頭の幹部が指摘するように、むしろ東証が問われるのは今後の対応だ。東証を傘下に持つ日本取引所グループは5日、独立社外取締役で構成される調査委員会を設置したが、詳細な原因究明、そして再発防止策といった「手当て」を、いかに迅速に明示できるかを国内外の関係者は注視している。その対応が遅れれば、国と業界が一体となって推し進める「国際金融都市構想」は大きく後退することになるからだ。