コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、ついにクラウドの本格活用を始めた。販売データなどを集約する新たなデジタルデータ活用基盤「セブンセントラル」が9月から稼働を開始。クラウドサービスとして採用したのは米グーグルの「グーグルクラウド」だ。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
“自前主義”のセブンがついにクラウド活用
2万店のPOSデータをリアルタイムで収集
コンビニの王者の選択は、アマゾンではなくグーグル陣営――。
コンビニエンスストア最大手、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)は、各店舗の販売データなどを集約するデジタルデータ活用基盤「セブンセントラル」に、米グーグルのクラウドサービス「グーグルクラウド」を採用した。
セブンセントラルは9月から稼働を開始。約2万店分のPOSデータをリアルタイムでクラウド上に収集して分析し、在庫管理や新サービス開発などでの活用を目指す。
アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグルという米ITの巨人たちが激しく火花を散らすクラウドビジネス。コンビニに限らず各業界でシステムのクラウド移行が進んでいるものの、“自前主義”を好むSEJは後発組だ。競合のローソンやファミリーマートが業務システムのクラウド移行で先行する中、自社サーバーにこだわってきた。
「リアルタイムでデータを把握し、変化対応したいというニーズがあった。だが、店舗や本部、基幹システムなどのデータが(分散して孤立する)“サイロ化”していた上に、システムのベンダーに依頼しないと何もできないベンダー依存の体質だった」
SEJシステム本部の西村出副本部長は、9月16日の記者説明会でセブンセントラル導入の背景をこう説明した。2019年初頭から開発を本格的にスタートさせ、グーグルクラウド導入専門のベンチャー企業クラウドエースも参加。クラウドを活用したことで、「既存のシステム開発と比べ、4分の1から5分の1の費用で構築できた」(西村副本部長)。
現在は約2万店分のデータを収集しているが、将来を見据えて3万店、1店舗当たり1日1000人が利用しても問題なく稼働する設計という。当初は顧客が商品購入後、そのデータが反映されて分析可能になるまで1時間を目標にしていたが、実際には「早ければ数分、遅くても10分でデータが確認できる」(同)。
現在セブンセントラルで収集できるのはPOSデータだが、今後は半年ごとをめどに機能を追加して商品発注や販促など社内外のデータを集約できるようにし、次世代の店舗システムや部署間の業務連携に活用することを目指す。
コンビニの世界でこれまで存在感を発揮していたクラウドサービスは、クラウド業界で首位をひた走るアマゾンの「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」だった。なぜSEJはグーグルクラウドを選んだのか。