新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、通期決算では減収減益のファーストリテイリング。それにもかかわらず、決算発表後に株価は急騰し、上場来最高値を更新した。市場が好感した背景にあったのは、強気な通期業績予想だった。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)
大幅な減収減益なのに
21年8月期は過去最高水準という強気予想
「本当に社会のためになる企業しか、もはや生き残ることはできません」――。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、10月15日に行われた2020年8月期通期決算説明会の壇上でそう語った。まるで新型コロナウイルス感染症の拡大が、社会に無益な企業を振るい落としたといわんばかりだ。柳井氏の自信が見て取れる。
そんな同社の売上収益は前年比12.3%減の2兆88億円、営業利益は同42.0%減の1493億円となり、過去最高益を更新し続けていたファーストリテイリングが、新型コロナウイルス感染症に行く手を阻まれた結果となった。
20年8月期決算の通期業績予想は3度も下方修正された。最終的には今年7月に3度目の下方修正を実施したものの、国内ユニクロの月次売り上げが好調に推移していたため、決算の数字に期待が高まっていた。決算発表直前には、ファーストリテイリングの株価は上場来最高値を更新し、7万480円を記録した。
3度目の修正予想は新型コロナのリスクを全て織り込み、業績の「底」を示したものだ。それが蓋を開けてみると、通期の実績はこの修正予想を大きく上回った。
むしろ、2度目の修正予想のほうが実際の業績に近い。事前にあえて厳しめの業績見通しへと下方修正することで、本決算でファストリの回復を印象づけるような流れとなった。
それが結果的に投資家にも好感され、翌日16日、株価はさらに最高値を更新し、7万3830円にまで跳ね上がった。