利益とお金は別物である

カノン 罠ですか。でも、利益が出ているんですよ。

林教授 君は利益をなんだと思っているの?

カノン お金ですけど。

林教授 つまり、君は損益計算書の利益が100万円だとしたら、会社の預金も100万円増えると考えているんだね?

カノン 違いますか?

林教授 残念ながら、違うんだな。

カノン えっ! 利益ってお金じゃないのですか? 父は「利益はお金」だと信じていますけど。

林教授 なるほど。おそらく利益が出ているのに税金を支払うお金がない。それで悩んでいるんだね。

カノン よくわかりませんけど、そうかもしれません……。

林教授 利益とお金は別物であることを知らない経営者は多いんだよ。君のお父さんだけじゃない。

カノン 利益がお金でないとしたら、何なのでしょうか?

林教授 幻想だよ。

カノン 幻想って、まぼろしのことですか?

林教授 その通り。正真正銘のまぼろしだ。だが、まぼろしと言っても、実はその意味はバイカル湖のように深い。とりあえず、その説明は横に置いておくとして、実際の損益計算書を見ていこう。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。 以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(K
ADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。