累計38万部超のベストセラー『餃子屋と高級フレンチ』シリーズでおなじみの著者・林 總氏の最新刊『たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室』が9月29日にダイヤモンド社から発売になります。本連載では、同書の中から抜粋して決算書を読み解くために必要な基本の知識をお伝えしていきます。登場人物は、林教授と生徒の川村カノンの2人。知識ゼロから始めて、いかにして決算書を読み解くスキルを身につけていくのか? 川村カノンになったつもりで、本連載にお付き合いください。
損益計算書の罠って?
林教授 今日取り上げる決算書は損益計算書(P/L)だ。もちろん、見たことはあるよね。
カノン もちろん、私、総務部長ですから。といっても、会計事務所から送られてきた書類をコピーして、社長や役員に渡すだけですけど。
林教授 君は名ばかりの部長だね。
カノン そうですか? 父は「会社経営は売上と利益を見ていれば十分」って言うんです。面倒な決算の仕事は経理部長と税理士に任せておけばいいって。
林教授 君もそう思っているのかね?
カノン 昨日までは。でも、先生からゲーテの話を聞いて、会計がそんな単純ではなさそうだって思えてきました。
林教授 多少会計の重要性がわかってきたようだね。
カノン ほんの少しですけどね。先生、今ふと思ったんですけど、強がり言っている父は、実は決算書を読めるようになりたいのかもしれないって。
林教授 なるほど。その心は?
カノン 私が社長室にいくと、いつも損益計算書を眺めては首を傾げていますから。
林教授 それは聞き捨てならないね。会社の業績は悪いのかね。
カノン いいえ。ここ数年赤字になったことはありません。
林教授 損益計算書の数字は問題ないのに、社長である君のお父さんには何か腑に落ちないことがある。税理士に聞いても腹落ちする説明はしてくれない。そんなところだろう。
カノン 先生、利益が出ているのに経営が苦しいってことはあるのですか?
林教授 珍しい話ではない。それが損益計算書の罠なんだよ。だが、多くの経営者はその罠を知らない。