「つぶされない銀行」が決められた

 バーゼル委員会と金融安定理事会(FSB)は、G-SIFIs(Global Systematically Important Financial Institutions)として、20~30ほどの金融機関を選定して、さらに厳しい自己資本規制等を課すことを決めている。日本からも、みずほ、三井住友、三菱UFJのメガバンクがG-SIFIsに選ばれている。

 大きな金融機関は「Too Big to Fail」で、つぶれそうになれば政府に救済されるという「暗黙の政府保証」があったわけだが、これからは暗黙でも何でもなく、ほとんど明示的につぶされない銀行が監督当局に指定されたわけである。これでは完全に金融社会主義だ。

 このようにボルカー・ルール、バーゼルⅢ、そしてG-SIFIsによって、国際金融の世界は、より強い規制、より少ない金融商品、より限定されたリスク、より多くの監督、そしてより少ない自由へと突き進んでいる。
  国際金融業は冬の時代に突入したのだ。

 僕は、このような国際金融規制の潮流を大変残念な思いで見守っている。結局、金融機関を規制する側の当局も、自らの権益は手放したくないし、今までのやり方を大胆には変えたくないのだ。原発事故が起こったときの、電力会社と規制・監督当局である経済産業省などの関係でもそうだけれど、基本的に規制される側の民間のほうで不祥事が起こると、世論の勢いを利用して、規制側の政府機関は大きくなっていくのだ。税金で運営される公的機関というのは、自らの組織の権限を大きくしていく、という本能に突き動かされているからだ。

 世界同時金融危機では、金融システムの崩壊を防ぐために、直接、間接的に国民からの税金という信用に支えられる各国政府、中央銀行の助けが必要になった。これに対する本来の規制改革は、大きすぎてつぶせない金融機関の規模や機能を制限して、ひとつの金融機関が破綻しても、金融システム全体が崩壊するような事態が起こらないようにすることだった。