再開直後は疲労困憊していたチームが起死回生した理由

 新型コロナウイルスによる長期中断から再開された、7月4日の第2節から最初の10連勝がマークされた。もっとも、この間のMFとFWの組み合わせは6通りだった。敵地・豊田スタジアムに乗り込んだ8月23日のグランパス戦で初黒星を喫して連勝を止められ、そのまま敵地へ移動した同26日のヴィッセル神戸戦でも一時は逆転されながら、何とか引き分けに持ち込んだ。

 昨年11月に左ひざに大けがを負ってから復帰に向けた秒読み段階に入り、当時はチームに帯同していなかった中村は、遠征から帰ってきたチームメートたちの姿に驚いている。

「正直、あのときはみんな疲労困憊なところがありました」

 再開後の過密日程に高温多湿の夏場の戦いが拍車をかけていた悪循環を、鬼木監督も把握していたのだろう。ヴィッセル戦から再び中2日で迎えるエスパルス戦以降、すべての試合で先発する攻撃陣の顔ぶれを変えた。待望の復帰を果たした中村も、現時点で4試合の出場にとどまっている。

 昨シーズンはリーグで2番目に多い12を数えた引き分けが響き、4位に終わって史上2チーム目となるリーグ戦の3連覇を逃した。そこで、迎えた今シーズンはFWを1トップから3トップに、中盤もボランチを2枚置く正三角形型から、底辺にアンカーと呼ばれる選手を1人置く逆三角形型に変えた。

 相手ゴールに近い位置に多くの選手を配置することで攻撃の回数を増やし、さらに相手ボールになった直後に素早く数的優位を作って奪い返す。引き分けを勝利に変える戦法だが、これはコロナ禍に見舞われる前の2月22日に行われ、サガン鳥栖と0-0で引き分けた開幕戦ではまだ浸透していなかった。

 その後に余儀なくされた長期中断を、プラスに転じさせたことが再開後の連勝につながった。昨シーズンの泣き所だった右サイドバックとして湘南ベルマーレから加入した山根視来、そして筑波大学卒の三笘薫、順天堂大学卒の旗手怜央のルーキーFWコンビも順応する好循環も中断期間に生まれた。

 さらに新型コロナウイルス対策として再開後に導入された特別ルールを、鬼木監督はフル活用している。従来の「3」から「5」に増えた交代枠が、第2節以降のすべての試合で余すことなく行使されてきた中で、必然的に層が厚くなった選手たちの間で競争心があおられる状況が生まれた。

 例えば中断期間に成長した三笘と旗手がそろって先発したリーグ戦は、今月10日のベガルタ仙台戦の一度しかない。どちらかが先発すれば、増えた交代枠の中で途中出場の機会を得たどちらかが燃える。結果として三笘はJリーグ史上で5人目となる2桁ゴールに到達したルーキーとなり、先発回数で11回と三笘の5回を大きく上回っている旗手も5ゴールを挙げている。

「競わせている、という感覚は特にないんですけど。ただ、切磋琢磨を意識させなくても彼らの向上心は目に見えてすごいものがあるので、自分とは関係のないところで成長してくれていますよね」(鬼木監督)

 チームを活性化させている2人の存在に、鬼木監督も思わず目を細めたことがあった。24試合を終えた時点でたたき出したリーグ最多の68得点のうち、途中出場した選手が21ゴールを挙げているのも、チーム内に競い合うライバルがいるからに他ならない。指揮官はこんな言葉も紡いでいる。

「交代した選手が点を取るのはウチのスタイルというか、点を取るという役割を理解した上でピッチに入ってくれているので。もちろん先発した選手が前半からハードワークした結果として、相手チームに疲れが出てきていることもあるので、全員の力で勝てていると思っています」(鬼木監督)