世界一のビッグクラブ、レアル・マドリードへ移籍した18歳の久保建英が、トップチームに帯同しているプレシーズンで存在感を高めている。世界中からスター選手が集結する新天地で威風堂々とプレーしている背景は、流暢なスペイン語と習得中の英語を駆使して、積極的にコミュニケーションを図れる点を抜きには語れない。輝きを増す久保を介して図らずもクローズアップされた、グローバル化が加速されるサッカー界における外国語の習得事情を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
久保建英は2つのスペイン語を習得
地元紙も驚くほどの完璧さ
通訳を介する記者会見で初めて遭遇する展開に、思わず耳を疑った。スペイン人の女性記者による質問が始まってすぐに、悲鳴にも近い同時通訳の声が響いてきたからだ。
「カタルーニャ語で話されているので通訳できません」
スペインの名門FCバルセロナを招いて、7月下旬にプレミアリーグの強豪チェルシー、J1のヴィッセル神戸と対戦したRakuten CUP。日本語への翻訳ができない状況が訪れたのは、ノエビアスタジアム神戸で行われた後者の試合後の記者会見だった。
バルセロナのエルネスト・バルベルデ監督へ、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。その中で通訳が白旗を上げたカタルーニャ語とは、スペインにおける4つの公用語のひとつで、一般的にスペイン語と呼ばれる標準語のカスティージャ語とは似て非なるものだという。
カタルーニャ語はバルセロナを州都とする、スペインの中でも独立志向の強い東部のカタルーニャ州における公用語として認められている。そして、今夏に世界一のビッグクラブ、レアル・マドリードへ移籍した18歳の久保建英は、カタルーニャ語を完璧に操ることができる。
レアル・マドリードの宿命のライバル、バルセロナの入団テストに合格した久保は、10歳だった2011年8月に川崎フロンターレの下部組織を退団して渡欧。カンテラと呼ばれる下部組織の金の卵たちが集う選手寮、オリオル・トルト育成センターでの生活をスタートさせた。