サッカー日本代表欧州組が直面する、容赦ない「30歳の掟」
30歳の掟に挑戦する吉田麻也(左)と長友佑都(中)。一方でその掟を跳ね返した川島永嗣(右) Photo:JFA/AFLO

新型コロナウイルスに翻弄されたヨーロッパ各国のリーグ戦がようやく終わった。新シーズンへ向けて移籍期間に入っている中で、日本代表に名前を連ねる選手たちが対照的な状況に置かれている。19歳の久保建英が数多くのクラブからラブコールを送られた一方で、31歳の吉田麻也と33歳の長友佑都は今月上旬の段階で所属クラブなしのフリーとなっている。かつて香川真司が言及した、年齢をもって一概に判断される「30歳の掟」が、そこには存在している。(ノンフィクションライター 藤江直人)

香川真司が指した「そこ」とは

 日本代表の「10番」を背負い、2014年のブラジル、18年のロシア両大会と2度のワールドカップを戦ったMF香川真司から、切実な言葉を聞いたことがある。

「やはり30歳になると、ヨーロッパでは特にシビアにとらえられる。年齢のことも含めて、今までに経験したことのない、いろいろな現実を見せられた1年間でした」

 セレッソ大阪から移籍した独ブンデスリーガの強豪ボルシア・ドルトムントで、センセーショナルな活躍を演じて連覇に貢献。英プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドをへて、再び加入したドルトムントで通算7シーズン目を迎えていた香川は、19年3月に30歳になった。

 年齢の十の位が変わるシーズンに、問答無用で実質的な構想外に置かれたと振り返ったのは、森保ジャパンに招集されていた昨年6月上旬。ドルトムントとの契約をあと1年、つまり今夏まで残していたが、もはや居場所はないと理解していた香川は、クラブの許可を得た上で新天地を探していた。

 出場機会を求めて昨年1月にトルコのベシクタシュへ期限付き移籍していた香川は、契約を終えた後もドイツには戻っていない。その視線は、長く憧憬の念を抱いてきたスペインへ向けられ、2部のレアル・サラゴサの一員となった過程で、年齢だけで一概に判断された事実に反発心をたぎらせている。

「そこを受け入れるつもりはないというか、そこを気にして『僕はもうダメなのか』という気持ちになっているようでは、生き残っていくことはできないので」

 短い言葉の中で2度も言及した「そこ」とは、言うまでもなく30歳を指す。21歳の夏にドイツへ挑んだ香川は、30歳を超えた仲間たちが世代交代の対象となり、チームを追われるケースを何度も見てきたのだろう。それはヨーロッパに存在する「30歳の掟(おきて)」と言えばいいだろうか。

 香川自身がその掟に巻き込まれてから、1年以上も経って筆者がそれに言及したのには理由がある。日本代表で苦楽を共にしてきた吉田麻也と長友佑都の両DFが、まさに同じ状況に置かれているからだ。

 名古屋グランパスからオランダのVVVフェンローを経て、12年7月に英プレミアリーグのサウサンプトンに移籍。センターバックを主戦場として154試合に出場してきた31歳の吉田は、6月30日に更新した自身のインスタグラム(@mayayoshida22)で契約が満了したことを報告している。

「ひとつだけ後悔していることを挙げれば、チームメイトやスタッフ、友人たち、そしてファンの方々にしっかりとさようならを言えなかったこと。でも、これもフットボールの一部だと思っている」

 サウサンプトンとの契約が満了した時点で、吉田は出場機会を求めて期限付き移籍していた、伊セリアAサンプドリアの一員として戦っていた。故にサウサンプトンで関わった全ての人々に対して、公式の場で挨拶ができなかった複雑な心境をつづっている。