台風上陸後のテレビニュースでは「ホテルなら、ソーシャルディスタンスもとれるので、新型コロナに感染する不安が少ない」「自宅よりも頑丈な建物なので、安心して過ごせる」「高齢なので、(自治体の避難所のように)体育館の床にマットを敷いての雑魚寝は耐えられない」などの声が紹介されていた。確かにその通り。今後、災害時の避難所としてホテルや旅館を頼るケースは増えていくだろう。

一般社団法人日本環境保健機構の専務理事・高尾和宏さん
日本環境保健機構の専務理事・高尾和宏さん Photo by Hiromi Kihara

 日本の避難所がイタリアなどの国々と比べて環境が悪いことは、東日本大震災の頃から大きな問題になってきた。復興庁によると、大震災では3647人が関連死と認定されている。犠牲者の17%を関連死が占める。熊本地震では建物倒壊などの直接死は50人だったが、関連死は203人と4倍に上ったことが報告されている。

 そのため内閣府は、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を策定し、平成20年から「主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(要配慮者)」を滞在させるための「福祉避難所」確保に動いてきた。

 今年4月には災害時の新型コロナウイルスの感染対策をにらみ、ホテルなどの宿泊施設を避難所として活用するよう自治体に要求。内閣府が6月に各地の状況をまとめた結果では、1254の宿泊施設が協力を申し出ていることがわかっている。政府はこれらの施設を災害時には自治体が借り上げ、無料の福祉避難所として活用することを推奨している。

「ただ、福祉避難所に名乗りを上げたとしても、いざ受け入れとなると躊躇する施設は少なくないと思われます」

 そう語るのは一般社団法人日本環境保健機構の専務理事・高尾和宏さんだ。日本環境保健機構はこの9月、防災コンサルティングの株式会社イオタと提携し、「借り上げ福祉避難所(宿泊施設避難所)推進プログラム及び推進施設認証」を開始した。

「避難所を運営するとはどういうことなのか、具体的なイメージを持って名乗りを上げている施設はほとんどありません。内閣府は福祉避難所の運営マニュアルを作成していますが、マニュアル通りには絶対にいかない。事前のシミュレーション・トレーニングで準備しておかなければ、混乱するのは目に見えています。今回の台風10号でも、チェックイン時の混雑具合がSNS上で話題になってしまったところもありました」(高尾さん)