大統領選の勝利が報じられたバイデン氏。激戦州に住むトランプ派、バイデン派の生のドラマから、アメリカ再生への課題を炙り出す Photo:REUTERS/AFLO

激戦が繰り広げられた米国大統領選。投票日の深夜にドナルド・トランプ大統領が選挙の“不正”を最高裁で争うと宣言し、その3日後に全米のメディアがジョー・バイデン氏の勝利を伝えた。激戦州に住むトランプ派、バイデン派の生のドラマを現地からお送りする。(取材・文/ジャーナリスト・長野美穂)

全米メディアがバイデン勝利を報道
そのとき、激戦州の住民は?

「バイデンが次の大統領か。せめてミシガンがトランプに決まっていれば、結果は違ったかもしれないが、仕方ない」

 ミシガン州の共和党の「選挙人」の1人、79歳のジョン・ハガードはそう言った。トランプ大統領が「これは不正選挙だ。最高裁で闘う」と息巻いているが、この数ヵ月トランプの応援に打ち込んできたハガードは、意気消沈しながらも冷静さを保っていた。

「我々保守派は、マケインが選挙でオバマに負けた瞬間も、ブッシュ・シニアがクリントンに負けた日も体験してきたから。また立ち上がるだけだ。バイデンがどうこの国を率いるか、お手並み拝見だ。せめて経済を滅茶苦茶にしないことを祈るよ」

 そう語るハガードの背後からは、電動ノコギリのキーンという金属音が聞こえる。北ミシガンで配管工事の会社を経営する彼の元には、暖房工事や水道管修理の注文が、来年の夏までひっきりなしに入っている。

「正直言うと、うちの会社はオバマ政権時代には不況で、工事の注文が少なくて、倒産寸前まで追い込まれていたんだ。経営者として、社員の首も泣く泣く切るしかなかった。そんなとき、トランプのビジネス減税と景気回復のお陰で、やっと息を吹き返した。50年間、会社経営をしてきたが、こんなに業績がいいのは初めてだ。トランプの経済政策のお陰だよ」

 投票日前日の11月2日、トランプ大統領とペンス副大統領の2人がハガードの地元であるミシガン州北部のトラバースシティに演説にやってきた。気温7℃の中、数時間待ち続けて身体の芯まで凍えながら、ハガードは杖をついた妻と共に、大統領の演説をカナダから吹きすさぶ強風に煽られながら聞いていた。