ついにベスト10入りした県立富山高校(富山県富山市)。「受験は団体戦」という思いで、高1から始まる添削指導や長期休暇期間中の難関大志望者への特別授業、センター試験後には志望大学別講座を開講するなど、3年間のきめ細かい指導が成果につながった 写真提供:富山県立富山高等学校

復調傾向がうかがえる公立高校

「国公立100大学合格力」全国ランキング上位を私立中高一貫校が占める傾向に変化はないのだが、上位10校に前回わずか2校だった公立校が、今回は4校がランク入りした。

 次ページには、公立高校を抜き出した「全国公立高校ランキング」を掲載している。これには3年分の全国順位も参考までに加えてあるので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。

 都道府県立の名門校はいまどのような状況になっているのか。前回(2019年)に続き、公立校だけを抽出した全国ランキングを作成してみた。算出方法については、こちらを参照していただきたい。

 まず、公立校ランキングのベスト10を見てみよう。全体的に順位は入れ替わっている。前回1位の北野(大阪)は6位に、同2位の堀川(京都)は1位に、同3位の天王寺(大阪)は2位にといった具合で、京阪でのトップランクの奪い合いがうかがえるのは、関西での国公立志向の強さが背景にあるためだ。

 ただ、北野と天王寺の順位入れ替わりが起きるのは、必ずしも京都大に合格した人数でランクが決まっているというわけではなく、総合力で合格力が左右されているからである。京都大、大阪大、神戸大、時には東京大といったトップ校に浪人覚悟で果敢に挑む北野と、さまざまな国公立大で合格を勝ち取っている天王寺の志向の差が表れているように見える。

 今回3位の札幌北、同5位の札幌南はいずれも札幌市内の“東西南北”を冠した4つの道立高校の両雄で、地元の旧帝国大である北海道大への合格者数で激しく競い合うライバルでもある。今回は、札幌北が全国順位(国公私立を含む順位。以下同じ)を前回の92位から大きくランクアップしたことが注目される。大阪の北野と天王寺の関係同様、札幌南は東京大や京都大の合格者数では札幌北に大きく差をつけているが、大票田である北海道大の合格者やそれ以外の国公立大合格実績が両校の順位変動の要因となっている。

 関西では他に、4位姫路西(兵庫)と10位奈良(奈良)がいずれも前回ベスト10外から浮上している。

 九州大に何人送り込むかで地元での評価が左右される傾向があり、福岡の上位高なら100人以上の合格者も珍しくない九州の公立校では、9位に長崎西(長崎)が唯一ベスト10入りした。

 残りの2校は北陸で、7位藤島(福井)は急速に合格力を伸ばしている。全国順位で見ると、110位→33位→14位となって、今回、公立校ランキングでのベスト10入りをはたしている。藩校の系譜を継ぐ藤島は、県内では圧倒的な存在で、その座を奪うライバルは見当たらない。その点、8位富山(富山)は、今回の注目校といえる。

 富山の公立御三家は、富山市内にある富山と15位富山中部、県西部の高岡市にある37位高岡である。これを僅差で、富山東、砺波、魚津、高岡南といった学校が追うのだが、今回17位に砺波(となみ)が躍り出て、県西部でもわずかばかりの下剋上が起きている。

 富山は、県内最初の旧制中学校として1885(明治18)年に設立され、1968年には全国的にもいち早く理数科(2011年からは探究科学科)を設置した名門校である。

 一方、長らく県内トップ校として君臨している1920(大正9)年設立の富山中部は、富山の翌年に同じく理数科を設置、2011年には同じく探究化学科に改組するなど、同様の歩みをしてきた。神通川沿いで城跡や富山大にも近い富山中部と、市内の南側にある富山は直線距離で3キロと離れていない。よく似た兄弟のような両校だが、それだけに強烈なライバル意識をお互いに抱いている。

 首都圏をはじめとするその他の公立校の状況については、ランキングの後に話を継ごう。