アンバサダーの意見を
丸呑みしたほうがいい
土屋:「声のするほうに進化する」という方針は、お客様の声に対しても同じです。
新製品やビジネスモデルのヒントを得るときに有効なのが、異常値を検知すること。
想定外に売れた、異常な売れ方をした商品の異常値を丹念に調べていくと、自社製品につくり手が知らない隠れた用途があることがわかります。
たとえば、レストラン用として売り出した焦げにくく汚れにくい「難燃防汚胸付きエプロン」は、「家庭用の燃えないエプロン」として、主婦を中心に売れていました。
作業服もどんどんスタイリッシュになってきていますから、「作業用」と「家庭用」は十分両立できるんです。
この、「異常を検知し、調査する」のが、ブルーオーシャン市場拡大の原点です。
ただ、重要になるのは、顧客の意見を誰彼かまわず聞くのではなく、信頼関係を構築した「アンバサダー」の意見を聞くこと。
ワークマンでは「アンバサダーマーケティング」と呼んでいます。
今、ワークマンには、ブログやYouTubeなどでワークマンの情報発信をしてくれるアンバサダーが30人ほどいます。
我々は、アンバサダーの声を聞くことで大きく成長してきました。
もともと、作業服や作業用品も、職人さんの意見を聞いてつくっていました。
バイク関連の製品は、バイクのプロの声を取り入れて進化しつつ、これを一般客向けにしたらどうなるか、という視点でいろいろ製品を開発していったわけです。
ワークマンのアンバサダーマーケティングのポイントは、アンバサダーの意見を丸呑みすること。そのほうが、いい製品ができるんです。
以前、意見を丸呑みしたら、3000着しか売れなかった商品が、10万着売れるようになったこともありました。
実は、それを買ったほとんどの人は、アンバサダーのブログを見たことがきっかけで、ワークマンの製品を知ってくれたんです。
「声のするほうに進化する」からこそ、私たちは成長できるんです。
たとえば、会社側で勝手に「今年の流行はこれだ!」と決めつけ、お客様の声を聞かなかったら、成長・進化できないですよね。
だから、社員に対しても、お客様に対しても一緒なんです。
社員の声のするほうに、お客様の声のするほうに進化する。
もちろん、ブレないように、軸は設けるようにしています。
ワークマンは「作業服」に軸足がある。だからビーチウェアはやらない。
デザインではなく、撥水、防水、防寒、防汚といった機能性で売るわけです。
ただし、その決めた範囲内であれば、100%お客様の意見を聞くようにしています。
これも「しない経営」と関わってくる部分ですが、「すること」と「しないこと」がはっきりしているので、迷わない。