新たな計画では、2020年から2022年を「変革・復興期 第I期」として、まず環境変化・予測困難な未来に立ち向かう変化対応力を高める企業改革を推進。2023年から2027年の「変革・復興期 第II期」までに経営の強靭化を図り、2028年以降を「進化・成長期」にしたいとしている。

 反転攻勢のカギとなるのが今年10月に策定した「グループデジタル戦略」と、11月1日に発足した長谷川社長を本部長とする「デジタルソリューション本部」だ。

 デジタル戦略は「顧客体験」「鉄道システム」「従業員体験」を柱とし、デジタル技術によってグループ相互と外部の新しい価値を生み出していくとしている。

新型コロナによる経営危機が
デジタル技術の活用を後押し

 JR西日本は、何をしようとしているのか、デジタルソリューション本部データアナリティクスグループ課長の宮崎祐丞氏に話を聞いた。

 JR西日本がデータの活用を本格化させたのは2017年のことであった。宮崎氏は鉄道本部技術企画部の担当に任命され、2030年以降に訪れる人口減少社会を見据えた車両・施設・電気などエンジニアリング部門のメンテナンスの業務改革に着手した。

 これら技術部門で用いられる機器や設備は従来、故障の有無に関係なく定期的なメンテナンス・交換を行って故障を予防していたが、IoT(モノのインターネット)技術の進展により、状態の可視化、異常検知、故障予測が可能になったことから、状態に応じてメンテナンスを行う「CBM(Condition Based Maintenance)」の考え方が登場した。

 利用者と担い手がともに減少していく人口減少社会において、持続可能な鉄道システムの構築には鉄道事業の効率化・スリム化と働き方改革の両面からの取り組みが不可欠となる。メンテナンスの費用や工数を削減できるCBMはその中核として期待されていたからだ。

 その後、社員データサイエンティストの発掘や養成、データ分析を行う株式会社ギックスとの資本業務提携など、取り組みを着実に進めていき、エンジニアリング部門だけでなく、マーケティング分野においてもデータ分析に着手するに至ったという。社内でも徐々に存在感を増し始めた時に直面したのが、今回のコロナ禍であった。

 宮崎氏によれば、それ以前からデジタルソリューション本部を設立する構想はおぼろげにはあったというものの、新型コロナウイルスによる経営危機が彼らを一気に表舞台に引き上げることになった。