スパイのスキルは「ビジネススキルの宝庫」だった!すばらしい実績を残したCIA諜報員におくられる賞を約10年の在職中に2度も受賞した著者が、訓練で身につけたそのスキルの中から、ビジネスでも使える実践的な技を教える『超一流の諜報員が教えるCIA式 極秘心理術』がついに発売。
佐藤優氏が「競争に勝つための表技と裏技が盛り込まれた、強いビジネスマンになるための必読書」と絶賛する同書より特別に一部公開します。
あらゆる職業や階級の人、さまざまな学歴の人が採用されている
起業家となってもっとも胸躍る体験のひとつは、さまざまな経歴をもつビジネスマンと知りあえることだ。これまでにも、功成り名遂げたそうそうたるビジネスマンと面識を得てきたが、昔はコメディアンだった、弁護士だった、サーカスの曲芸師だったという人もいた。
諜報の世界も似たようなものだ―それはもう多様なバックグラウンドがあって、興味が尽きないような経歴の持ち主もいる。
それに、成功した起業家の大半がMBAなど取得してはいないように、世間がどう想像していようと、名門大学が未来のスパイを輩出しているわけではない。
たしかに諜報員は私の知るなかでもとびきり頭のキレる人間ばかりだが、CIAはさまざまな経歴をもつ人の価値を認め、尊重している。
映画「アルゴ」に登場するCIA職員のモデルとなったトニー・メンデスは、大学で美術を学んだ。彼はグラフィックデザイナーの求人に応募し、最終的にCIAに雇われた。また高名なシェフで、料理本の著書もあるジュリア・チャイルドは、ニューヨーク市の広告代理店でコピーライターとして働いたあと、OSS(戦略諜報局。CIAの前身)にタイピストとして入局した。そして、ついには国家機密のリサーチを任されるまでの信頼を獲得した。
またCIAの諜報員の多くが、高校卒業時には大学進学より軍隊への入隊を選んでいた(私自身は警官としてキャリアを始めた)。
スパイの一団と同席する機会があれば、これまでに一風変わった仕事をした経験はおありですかと、尋ねてみるといい。まちがいなく、意外な答えが返ってくるはずだ。
花屋の店員でした、タクシーの運転手をしていましたよ……。なかにはカウボーイだったという男もいるほどだ。CIAは当人が名門大学出身かどうかよりも、総合的な知能があるかどうか、そしてすばやく問題を解決する能力があるかどうかを重視する。
こうした知能と能力は、ビジネスの世界でも重視されるようになっている。ニュース専門放送局CNBCの先日の調査によれば、スモールビジネス経営者の大半は四年制大学の学位をもっていない。大学に通った経験のない経営者の数は、性別や年齢を問わず、大学に通った経験がある経営者の数より多い。
たしかに教育を受ける機会があるのはすばらしいことだが、卒業証書1枚あれば、経営者として成功できるわけではないのだ。
(本原稿は『超一流の諜報員が教えるCIA式 極秘心理術』ジェイソン・ハンソン著、栗木さつき訳の抜粋です)