いよいよ地域清掃スタート!

 ここに引っ越してから1週間ほどたった頃に町会長と班長がいらして、町内会に入る手順などを話して帰っていった。「町内会に入らない」という選択肢がないかのごとき話しぶりである。最近は都心なら、たとえ会費数百円だろうと町内会に入らない人も多いと聞くが、筆者が住む田舎はどうやら具合が違うらしい。

 年会費と入会金それぞれ1万円ということで町会費としては法外な額に大いに憤慨したが、払わなければ村八分的な扱いを受けるおそれもある…と考えるくらい、新居の町内会は未知であった。筆者と妻はまだいいが、娘が意地悪されたらたまらないのでやむなく入会を決意し、一応なぜだか温情を授かって「越してから1年たったタイミングで入会(つまり初年度の年会費が実質免除)してもらいましょう」ということになった。
 
 聞けば筆者の住む住宅街のメインストリートになっている400メートルほどの道が私道で、補修工事に何かと金がかかるからその金額ということらしい。入会せず徹底抗戦の構えでもよかったかもしれないが、ほぼ住民税のようなものと割り切れば心もそこまで波立たないと考え、なんとか不満を残すことなく納得できた。

 さて、町内会員が基本的に全員参加する地域清掃は日曜の8時半から始まった。怠惰な現代人である筆者は集合時刻を勝手に10時半と脳内変換していて危うく遅刻しそうになった。適当な一角に人が集まっていたので、そこに向かうと班長が出欠を取っていて、「武藤さんのところは旦那さんが参加でいいのかな」と丸をつけた。班長が手に持つバインダーに挟まれた数枚の千円札が生々しいあやしさを放っていた。あの枚数から察するに欠席者は相当少なそうであると推察された。
 
 1世帯につき1人が参加すればいいのだが、我が家では顔見せと、娘を外でうろつかせて疲れさせる目論見があったので全員参加である。もっとも娘担当の妻はほぼ仕事にならないだろうから、清掃員は実質的に筆者のみとなる。
 
 仕事は「男性はドブさらい、女性は草むしり。男性のうち数名は補修工事」と割り振られた。男女の性差から鑑みるに体力的に合理的な割り当てではあるが、男女を区別することに何かとデリケートなこのご時世に、そうした配慮について一顧だにしない采配がやや前時代的でもあるし潔くも思えた。
 
 ともあれ筆者はドブさらいである。『ドラえもん』など創作物の中でしかその存在を知らなかったあのドブさらいをいよいよ体験できるということで、筆者は興奮していた。