筆者は、中年を迎え初めて田舎暮らしを始めた元シティーボーイ。妻とまな娘、愛猫とともに、ほぼ在宅勤務の毎日を送っている。虫も殺せなかった筆者が、1年の田舎暮らしを経てどう変わったかお伝えしたい。(フリーライター 武藤弘樹)
田舎暮らし1年の総括
何事も慣れてくる
東京都港区育ちの筆者は、かつて虫を怖がる青年であった。中年となったタイミングで、都心近郊の虫が飛び交う田舎に家族で移り住み、そのあたりのレポートは過去記事「都会育ちアラフォーが、妻子と猫を連れて始めた『田舎暮らし』の現実」「恐怖のGも出現!田舎暮らしを始めたアラフォーが苦悩する『虫との闘い』」に詳しく書いたが、移住から約1年がたった現在、住んでみて気づいたことが多々あったので、今回はそれをまとめて紹介したい。元都会人の視点から、リアルな田舎暮らしの実態を伝えるべく努めたい。
まず、おさらいとして、引っ越しから4、5カ月経過時点に書いた上記記事では、
・一軒家はメンテナンスが大変
・古い木造は立て付けに難あり
・熱帯夜はあまりなく夜風が気持ちいい(たまに肥料の香りが運ばれてくる)
・買い物に不便はしない
・治安は悪くない
・虫が多いので少しずつ慣れてくるが、ゴキブリへの殺意は育つ
といったことを取り上げた。
感じたこと・気づいたことの方向性はここからさほど変わらないが、ストレスを感じていた部分は良い方向に修正されてきている。端的に言って、慣れが寄与する部分は大きい。
たとえば「家屋の立て付けの難」についてだ。窓、網戸、障子、ふすま、ドアなど、開け閉めする際は基本的にどれも女性の悲鳴のような音を立てるが、「そういうもの」という認識になると徐々に気にならなくなってくる。すると心に余裕が生まれ、「今のはあまり音がしなくてうまくいった」と喜んだり、「今の悲鳴は赤ん坊の泣き声のようだったな」とささいな変化を楽しんだりできる。
夜に窓から侵入してくる肥料のにおいも、まだ「わが家らしい心地よい香り」と感じる境地にまでは至っていないが、当初「くさい」と嫌がっていたものが、現在は「ややくさい」くらいで、不快感が低減されている。
虫はもう山ほど出てくるのでかなり慣れてきた。ただし、田舎然とした巨大なゴキブリに殺虫剤をかけたら飛んだので、身を翻して逃げるも、次の瞬間首に飛びつかれた時はさすがに絶叫し、翌日は一日中その光景のフラッシュバックに苦しめられた。けれど、あんな悲劇が一人の人間の身に幾度も降りかかっていいはずはないので、おそらく筆者はもう安泰であり、あとはひたすら連中をほふるだけの立場にある。虫に関しては、処理することが生活の張りのようになってきている部分もあり、その点については、後日詳述したい。