日本代表のために自らを鼓舞、W杯で勝つために…

 振り返れば2008年から代表の左サイドバックを担ってきた。30歳とベテランの域に達した前後から飛び交い始めた「ポスト長友」という言葉を、メディアなどで見聞きする度に「おっさんの意地や魂も見せつつ、若い世代に自分の経験を伝えていきたい」と自らを鼓舞してきた。

 出場すれば4度目のワールドカップになる、2022年のカタール大会のピッチに立ち、過去に3度挑むもことごとくはね返されてきたベスト8の壁を打ち破るためにも、まだまだレベルアップしたい。マルセイユでのハイレベルな挑戦が新たな未来を開く、と長友は信じて疑わない。

 仮定の話になるが、冬の移籍期間で妥協し、自身が望むレベルよりも落ちるクラブへ移っていたとしたらどうなっていたか。コミュニケーションの鬼を自負する長友でも、シーズン途中の加入だと新天地への適応にも時間がかかるだろうし、自身の現在地を振り返る余裕も生まれなかった。新型コロナウイルスの余波となる過密日程で、評価のダウンにつながる不慮のけがをしていたかもしれない。

 その意味ではあえて立ち止まる時間を設け、インプットを介して心身のリフレッシュを優先させた決断が状況を好転させたのか。もっとも、長友自身は好転という言葉に表情をちょっぴり渋らせた。

「もちろんマルセイユのようなビッグクラブからオファーをいただいたのはすごく光栄ですけど、好転したのかどうか、というのはこの先の活躍や結果にかかってくる。自分自身が成長できる環境に移籍した決断は必ず正解だと思うんですけど、それでも好転したとは思っていません。チャンスはもらえたと思っていますけど、課題といったものもまだまだ見えてきているので」

 アマヴィの控えとはいえ、出場機会が得られていない状況が課題のひとつにある。リーグ戦の出場は3度の先発にとどまり、チャンピオンズリーグのピッチにはまだ立てていない。一度は招集された日本代表の10月のオランダ遠征も、体調不良を訴えて入院した関係で辞退している。

「個人としては全然ダメでしたね。代表の試合に出ることではなくワールドカップで勝つことが目標なので、その意味ではコンディションやパフォーマンスを客観的に見ると正直、厳しいと感じています。体調面や所属クラブで試合に出ることを含めて上げていかないと」

 先発するも持ち前のサイドアタックをなかなか披露できないまま、後半13分にベンチへ下がったパナマ戦でのパフォーマンスに長友は自らダメ出ししている。

「日々、必死ですよ。一日でも長くプレーして、代表でも戦えることにつなげていかないと」

 代表での通算出場試合数は、パナマ戦で歴代単独2位の123になった。遠藤に追いつき、追い越せる一番手になっても、長友は「あまり先を見過ぎないように。数字よりもチームに貢献したい」と足元を見つめ、ヨーロッパの戦場で得た成長を代表に還元していく自分自身の姿を追い求めていく。

(敬称略)