ところが多くの企業において、経営する立場の人間がそうした指示をすることができていない。リモートワーク一つを取ってみても、最初は感染拡大防止ということからそうせざるを得なかったのは事実だ。しかし、やってみると意外にリモートでも業務が回るということが次第にわかってきた。むしろその方が業務コストも下がり、収益も向上するということが実際に起きてきている。

 残念ながら、そういう実感を持っているのは実際に働いている現場の人間であり、経営者や管理職がそのあたりのことを全くわかっていない企業も多い。つまり、コロナ禍のような特殊な状況下においては経営者が脳漿(のうしょう)を絞り出して戦略を考えなければならないにもかかわらず、全くそれができていない人も居るということなのだ。

 そういう企業では、夏以降にコロナが少し収まってくると何も考えずに出社を命じるということが起こっているのだろう。もちろん出社しないとできない業種や仕事の内容であればそれはやむを得ないし、前述のように実際に会って話した方がクリエイティブな仕事ができるものであれば招集をかけるのも良い。

 しかしながら「コロナが収まったから」という理由だけで、全員に出社を命じるというのは経営者や管理職が何も考えていないと言わざるを得ないのでないか。要は、自分の会社や部署から感染者が出て自分の責任を問われたら困るので、何もかも一緒くたに「在宅」を命じ、少し緩んでくると「出社」を命じるということになるのだろう。そこには経営者として必要なビジネスに対する判断力はかけらも見当たらない。