東京メトロでみかける「謎の箱」の正体は?富士ゼロックスの意外な挑戦新サービス「Cocodesk」(写真提供:富士ゼロックス)

最近、東京メトロ駅構内に「不思議な箱」が増えている。実はこれ、富士ゼロックスが開発した時間単位で利用できる個室型ワークスペース「CocoDesk」というもの。デジタル複合機・プリンター事業などで有名な同社が、なぜこのような新サービスを始めたのか。その裏には面白いストーリーと、既存事業との意外なつながりがあった(フリーライター 有井太郎)

コロナ禍でニーズは右肩上がり
出先のオンライン会議も困らない

 東京メトロの大手町駅や溜池山王駅を歩いていて、「不思議な箱」を見つけた人はいないだろうか。高さ・横幅とも2メートルほどのサイズで、中央にスライドドアがついている。そのドアには、デスクでパソコンを使う人を表したピクトグラム(視覚記号・サイン)が描かれている。
 
 この“箱”の正体は、時間制で利用できる個室型ワークスペース「CocoDesk(ココデスク)」。スライドドアを開けると、中にはデスクと椅子、大型モニターが配備されている。無線LANや電源コンセント、USBコンセントもあり、仕事をするには過不足ない環境だ。コロナ禍で増えた「出先でオンライン会議を行う場所が見つからない」というケースにも最適の空間と言える。
 
 加えて、この小ささでもエアコン完備という充実ぶり(※一部の設置場所では対応していないブースもある)。会員登録すれば250円/15分で利用できる。登録料や会員料はかからない。今年2月にサービス開始し、現在、東京メトロ沿線などの16駅とオフィスビル5カ所に計40台設置されている。コロナ以降、テレワークが増える中でCocoDeskの利用者も増えているという。

 開発したのは富士ゼロックス。複合機やプリンター、文書管理サービスで有名な同社だが、なぜこのような新領域にチャレンジしたのだろうか。
 
「CocoDeskは、ある営業社員のアイデアから生まれたものです。最初はこのアイデアを富士ゼロックスが事業化すべきなのか、社内でも相当な議論となりました。そこで2018年から実証実験を行い、事業の可能性や実現性を検証。良い結果が得られたため、今年2月のローンチに至りました」
 
 こう語るのは、富士ゼロックスのアドバンスドインダストリアルサービス事業本部の丹野泰太郎氏。1人の社員から出てきたアイデアは、どのような足取りを経て事業になったのだろうか。そしてなぜ、新領域のサービスをスタートできたのだろうか。富士ゼロックスでビジネスプラットフォームの開発を担う丹野氏と高梨紀氏(高は正しくは「はしごだか」。以下同)に聞いた。