キヤノンの2019年12月期通期決算が1月29日に発表され、純利益が前期比で半減する衝撃の着地となった。デジカメやレーザープリンターの低迷に加え、米中貿易摩擦による世界経済減速、為替の円高影響が追い打ちをかけた。20年12月期は3期ぶりの増収増益を見込み回復基調とするが、今後、「富士フイルムー米ゼロックス」の統合交渉決裂に端を発した事務機器業界再編が、キヤノンにとって新たな火種となりそうだ。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
3度の下方修正の末に
大幅な減収減益
「想定以上に厳しいものとなりました」。キヤノンの田中稔三副社長兼CFO(最高財務責任者)のこのセリフを、1年間に何度聞いたことだろう。
キヤノンの2019年12月期通期決算(米国基準会計)は売上高3兆5933億円(対前期比マイナス9.1%)、営業利益1747億円(同49.1%)、純利益1251億円(同50.5%)。前期比で営業利益、純利益共に半減する非常に厳しい結果となった。
当初の19年12月期通期予想は、売上高3兆9000億円、営業利益3250億円、純利益2400億円。期中に3度も下方修正に追い込まれた。田中副社長兼CFOは見通しの誤りについて、世界経済の不調、為替の影響に加え、「IoT(モノのインターネット化)やAI(人工知能)がもてはやされており産業機器は順調に推移すると読んでいたが、昨年前半に調整局面を迎えた」と説明した。
キヤノンは20年12月期通期予想を、売上高3兆7000億円、営業利益2300億円、純利益1600億円とし、3期ぶりの増収増益を狙う。市場縮小のデジカメとレーザープリンターは「かなり慎重な見通しとした」とする一方、市場拡大中の医療やネットワークカメラ、調整局面が続いた有機EL蒸着装置などで成長の自信を示した。
ただ今後気になるのは、この日の会見では言及がなかった事務機器の業界再編がキヤノンにもたらす悪影響だ。