ドン・キホーテ(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)の創業者である安田隆夫氏が後継者として白羽の矢を立てたのは、創業当初からの“戦友”である大原孝治氏だった。ところが12月3日、その大原氏が東京地検特捜部に逮捕されてしまった。当時、上場企業のトップだった人物が、公表前の内部情報を基に知人へ自社株の購入を勧めた金融商品取引法違反の疑いで逮捕されるという、異例の事態だ。その大原氏は、創業者の安田氏の後を受け継ぐ直前の心境について、2015年に「週刊ダイヤモンド」のインタビューに答えていた。その記事を再掲載する。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
創業者・安田氏への最大の恩返しは
「無私で真正直」な心での粉骨砕身
――安田隆夫会長から引退を伝えられたのはいつですか。
はっきりと覚えていないのですが、2012年ごろから「俺は早く引退するぞ」と言い始め、13年に私が副社長になったころから「俺は辞めるんだ」と強く言うようになりました。15年6月という時期については、14年の9~10月ごろ、会長室で伝えられたのですが、そのときは半信半疑で「また言っているよ」と思っていました。
そして、14年の暮れに真剣な顔で「中間決算で発表するからな」と言われ、「乱暴じゃあないですか」と返した記憶があります。ただ、会長が勇退できる状況をつくることも、弟子の役割かなと思ったので「好きになさってください。ただ、会長の後を継ぐとしたら迷惑です」と伝えました。すると会長は「そんなこと言ってもしょうがねえよな、辞めるんだから」といつもの口調で言われたことを覚えています(笑)。
――覚悟はしていたのですか。
まったく(笑)。安田会長という日本一の創業経営者に対して、日本一の番頭になりたいというのが私の志でしたから。