無事にMBOを果たした後も、1年半は睡眠時間3~4時間で休みなしで働いた。このままでは身体を壊してしまうと、週に1度は休みをとることにしたが、2年目には血を吐き、入院することになった。それでもすぐに退院して仕事を続けた。6カ月で12キロ痩せた。清川氏は「命を削って働いてきた」と振り返っている。

業態転換で他社を迎え撃つ

 現在、タイヨーでは新しい業態にも挑戦している。ひとつは、超ローコストで運営する200坪ほどの店だ。入荷した商品はすぐに売場に並べ、在庫を持たないようにする。バックルームのスペースは不要になり、運用も通常の店の3分の1の人員で行う。

 すでに10店舗ほどオープンし、すっきりと洗練されたデザインが好評だ。今後、既存店をこのタイプの店にどんどん転換していくつもりだという。

スーパーの店舗の「おかしな現状」を主婦感覚で解決、銀行も驚くスピード復活劇清川照美(きよかわ・てるみ)/株式会社タイヨー取締役副社長。元東証二部上場の㈱タイヨー2代目の妻として主婦業に勤しんでいたが、同社の監査役や取締役として経営に参画するようになる。関連会社の代表取締役として、新業態の開発や既存店の立て直しに貢献。2013年、MBOを進めてタイヨーのスピーディーな社内改革を実現させた。6年半で300億円の借金を返済するなど経営手腕を発揮した。2019年慶應義塾大学大学院経営管理専攻の修士課程修了。現在も司令塔として管掌、タイヨーの改革を進めつつ、ケア・サポーターズクラブ鹿児島会長を務めるなど地域貢献にも尽力する。

 もうひとつは、スーパー内で薬を販売する売場を作ることだ。ドラッグストアは薬ばかりでなく、酒、米、生鮮などを格安で扱い、食品スーパーにとって手ごわい相手になっている。それに対抗して店舗で薬を扱えるようにする。

 2016年より本部にモデル店舗を作って社員向けに薬の販売実験を始めた。現在は10店舗ほどで薬の売場を導入している。医薬品を販売できる専門職・登録販売者の育成も図り、140人ほどまで増えた。いずれはタイヨーの全店舗で展開したいという。

 さらにもうひとつ、より安くより良いものを、より多くの方に利用してもらいたいと始めたディスカウント業態だ。今期、宮崎地区から始めている。

 ものすごいスピードで改革を進め、新しい領域へ踏み出してきた。抵抗や反発は大きかった。だが、味方になってくれる人も大勢いたという。

「そんな方たちが必死になってやってくださいました。結果が出た時、協力してくださった方から『清川照美のために自分たちはがんばった』とおっしゃっていただいたことが一番うれしかったことです」(清川氏)。

 道はまだまだ半ばだという。(終わり)