経営危機スーパー改革はトイレ掃除から、遠巻きに見ていたスタッフも動き始めた

強い反対をはねのけて、スーパーマーケットチェーンを展開するタイヨーのMBOを成功させた清川照美副社長。改革の手始めは掃除だった。自らゴム手袋をはめ、トイレの便器を磨き始めた。多くの社員、スタッフはあっけにとられて遠巻きに見ていたが、やがて動き始めた。(フリーライター 山本明文)

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 本部の改革と並行して進めたのが、各店のテコ入れだった。タイヨーの約100店のうち半数以上が赤字だったのだ。

 タイヨーには以前から店舗運営改善のための業績業務改善課が存在した。ベテランの社員が赤字店に集中的に入り込み、売場を作り直したり、仕入れ計画を見直したりしつつ、店舗スタッフの指導を行う。ありとあらゆる手を使って、1年かけて黒字化するのだ。

 だが、今回はそんなに悠長に構えてはいられない。一つの店で長くとも2週間と期限を決め、清川氏自らが先頭に立ち集中的に改善を図ることにした。

 まず、本部に近い赤字店を選んで業績業務改善課の社員とともに乗り込むと、清川氏が始めたのが、何とトイレ掃除だった。自らゴム手袋をはめ、便器を磨き始めたのだ。

「これまで焼き肉店や酒販店の立て直しに関わりましたが、いずれの経験でもバックルームが汚いお店は数字をあげられませんでした。それは断言できます。数字を上げたければ、まず掃除をすること。赤字を解消したいならば、整理整頓に取り組むこと。それを徹底するんです」(清川氏)

 どの店もバックルームはひどく荒れていた。中でもトイレはひどかったという。「食品を扱う店として致命的」と清川氏はサンドペーパーで便器をひたすら磨いた。掃除の意義を訴えたり、議論することはしなかった。ただただ自ら動いたのだ。こびりついた汚れは簡単には落ちなかったが、それでも1週間続けると見違えるほどきれいになっていった。

 掃除の範囲は、トイレからバックルーム全体へ、通路へと広がっていったが、そうすると、あちこちに積まれたままのダンボールの存在が気になり出した。