2020年4月に緊急事態が宣言されてから、わたしたちの日常生活は大きく様変わりした。突然起きた「コロナ禍」という状況下で不安やとまどいを感じる人が多いなか、さまざまな分野で「自分にできることで、誰かの力になりたい」という動きも起きた。

声優の梶裕貴さんもそのひとり。「朗読の力で、自分も誰かの助けになれるかもしれない」という思いから、YouTubeに「梶裕貴チャンネル」を開設し、童話などの朗読を行っている。当代きっての人気声優の朗読とあって注目度も高く、子どもから大人まで多くのファンやフォロワーたちがその更新を心待ちにしているという。

そんな梶裕貴さんがつぎの朗読作品に選んだのが、『嫌われる勇気』。発売から7年で国内だけで238万部を突破、世界各国で翻訳版も出版されており、世界累計部数は570万部を超える話題作だ。

YouTubeで公開される動画は『嫌われる勇気』第一夜までを朗読した全11本。その1本目となる物語のプロローグ部分の動画が、12/12にオンライン配信された『嫌われる勇気フェス』#嫌フェス で公開され、大きな話題を呼んでいる。そこで本稿では、その「嫌フェス」で公開された梶裕貴さんのインタビューを「ダイヤモンド・オンライン」特別版としてお届けする。

「いま、自分にだからこそできることは何か?」――人気声優 梶裕貴が朗読動画に込めたその思い

声の力を使って行動を起こす

――はじめに、コロナ禍にある今年の4月にご自身のYouTubeチャンネルを開設された思いを、あらためてお聞かせください。

梶裕貴さん(以下、梶さん) わたしたちはいま、人類の歴史の中でも何百年に一度起こるか起こらないかというくらいの、未曽有の事態に直面しています。そんななか、いま僕は生きていて、声優という仕事をさせていただいています。ひとりの人間として、声優として、たくさんの不安や生きづらさがあるこの時代に、何か"自分にだからこそできることはないか"と考えました。そこでたどり着いたのが、やはり「朗読」というエンタテインメント。声の力を使って何か行動を起こすことが、皆様にとっても、自分にとっても、一番プラスになるんじゃないかと思い、YouTubeチャンネルを創設しました。

 それまでは、自分がYouTubeをはじめるなんて想像もしていませんでした。YouTubeというコンテンツ自体に触れる機会も少なかったので、実際にスタートするときも、あまり現実味はなかったですね。でも実際に配信をして、それをご覧くださった方々から、「勇気をもらった」とか「元気をもらった」、「癒された」なんてお言葉をいただくと、やってみてよかったな、自分にもできることはあったんだな、とあらためて嬉しくなりました。

――チャンネル開設当初は、おもにお子さん向けの絵本を朗読されていましたが、最近はちょっと面白いお話など、幅広いジャンルの本を朗読されています。朗読する本は、どんなふうに選んでいるのでしょうか。

「いま、自分にだからこそできることは何か?」――人気声優 梶裕貴が朗読動画に込めたその思い梶裕貴(かじ・ゆうき)
2004年に声優デビュー。
「進撃の巨人」のエレン・イェーガー役をはじめ、「七つの大罪」のメリオダス役、 「僕のヒーローアカデミア」の轟焦凍役など、話題作のメインキャラクターを数多く演じる。 2013年度には史上初の2年連続で声優アワード主演男優賞を受賞。2018年5月に著書 『いつかすべてが君の力になる』を出版し、累計7万部(2020年8月現在)のヒットを記録。WOWOWオリジナルドラマ「ぴぷる〜AIと結婚生活はじめました〜」で主演を演じるなどの実写出演のほか、 プラネタリウムのプロデュースやアパレルブランド「en.365°エンサンビャクロクジュウゴド」を展開するなど、活躍の場を広げている。

梶さん YouTubeを開設した当初は、外出すら気軽にはできないような時期で…いつも外で遊んでいたであろう子どもたちも家の中だけで過ごすようになって、毎日時間を持て余してしまうような環境でした。だからこそ、子どもたちに「おうちで楽しめるエンタテインメント」を届けられたらなと思って、童話や昔話を中心に朗読していました。

 そのうちにご家族の方、親御さんや一緒に過ごされている大人の方々からも、意外な反応をいただくようになったんです。絵本の内容はもちろん、「読んでいるリズム、声というもの自体に安らぎや癒しというものを感じました」というお声をいただけるようになって。そこからは物語だけではなく、たとえば素数を数えてみたり、羊を数えてみたり(笑)。「聴いているとすごく心地よくて、いい眠りにつけました」といったお声もいただけるようになって、そこから朗読の幅も広げていきましたね。

 そんななかで、今度は出版社の方や今までご縁のあった方々から、逆にいろいろな作品の朗読化のお話をいただけたりするようにもなって。このあたりから少しずつ、本来、自分が実現したかった"声を使った表現…お芝居を通して、皆さんに楽しんでいただけるようなものをつくる"というスタイルを、どんどん形にしていけたように思います。

――梶さんの声を聞いていると、本当になんというか心が落ちついてくるんです。どんなサプリよりも、梶さんの朗読が熟睡に効果がありそうで、ストレスを抱える大人の読み聞かせにもぴったりだと思いました(笑)。

梶さん ありがとうございます(笑)。

――『嫌われる勇気』をつぎの朗読作品に選んでいただき、ありがとうございます。

梶さん いえ、こちらこそ!