ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

いまだに自前主義を貫く日本のICTベンダーは、
重複する事業を切り出し、統合し、グローバル社会の中で勝ち残るための戦略を今すぐ立て直さなければいけない

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第9回】 2012年10月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
4
nextpage

「外から買ってくる」といった発想など微塵も持たない国民性

 近年は、「日本式経営は失敗だ」とさえ言われていますが、かつては「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたように、世界中が日本の企業経営を学ぼうとしていた時期がありました。しかしながら、筆者は、日本式の企業経営は失敗などしていないし、起死回生は十分可能だと思っています。なぜなら、日本の技術力の高さは、日本人の良さや強みそのものを表しているからです。

 日本には、ノーベル賞受賞者が大勢います。これは、日本人が何か一つのものを奥深く掘り下げたり、神業の領域にまで磨き上げるという国民性を持っている証拠です。たとえば、日本には老舗企業が多く、3代目、4代目という企業も少なくありません。いったん一つの商売に打ち込み始めると、そこから抜け出す、逃げるといった発想は思いつきもしません。「これを磨け」と言われれば、どう磨くかをただひたすらに考える国民性であり、「外から買ってくればいいじゃないか」といった発想など微塵も持たないのです。

 また、バブル崩壊の前まで日本企業には終身雇用という制度がありました。一度、会社に入れば、「企業戦士」と言われるほど、会社に尽くす人間となり、自分の人生のすべてを会社に捧げるような気持ちで仕事に打ち込みました。

 さらに、いまだに「家業を継ぐために10年間勤めた会社を辞めて、実家に戻った」という話もよく聞きます。一つ技を極めるといった職人気質が日本人の大きな特徴であり、最大の強みなのです。

 韓国には老舗企業はほとんどありませんし、終身雇用制度もありません。韓国の親の99%が、「自分の職業を息子や娘に継がせたくない」「こんな苦労は息子にはさせたくない」と思っています。もちろん、このような精神は過去に安住せず常に新しい挑戦を続けさせる原動力にもなっているのですが。

 このような国民性に対して、もし、日本式経営が失敗しているとすれば、経営そのものではなく、その動かし方に理由があると思います。日本人の国民性を生かせていない社会の仕組みが最大の問題なのです。その社会の仕組みとは、中途半端に導入された米国式経営のこと、すなわち、終身雇用の廃止、非正規雇用の導入、成果主義の導入です。

 そして、人材派遣会社が人材の流動化と言われる政策に大きく加担しました。人材の流動化と言うのも企業経営には良い側面もありますが、日本的慣行である「終身雇用」の文化を否定することでもあり、会社と社員の関係は家族よりも、経営が悪くなればいつでもリストラをする雇用主と、より良い条件で雇ってくれる会社があれば、いつでも転職する労働者が互いに利用しあう冷たい関係に変貌してしまったのです。

previous page
4
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

廉 宗淳
[イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。

廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

「廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか」

⇒バックナンバー一覧