このところ、日本企業に関する明るい話題をほとんど耳にしません。その根本原因はどこにあるのでしょうか。日本企業が経営悪化から脱却するにはどうすればよいのでしょうか。今回は、製造業、そして、電子政府、電子自治体政策に深く関わるICTベンダーの実例を挙げながら、日本企業に必要な変化を考えてみました。

業績悪化の根本原因は日本企業の「傲慢さ」にある

 最近、世界中に広がっているアップルとサムスンの特許権侵害に関する訴訟問題が大きな話題となりました。しかし、アップルはサムスンの半導体がないとiPhone5を作れませんし、サムスンのGALAXYは日本の最先端素材や部品がないと作れません。このように、今や国境を越えて各企業は密接に結びついており、切っても切れない関係にあります。

 特に日本と韓国の分業は数十年続いている構造的なもので、日本が素材や部品を開発すると、韓国はそれらを輸入し、最終製品として組み立て、海外に売るといった役割分担になっています。つまり、韓国の輸出額が増えるということは、同時に日本の輸出額が増えるということを意味します。

 そのような関係にもかかわらず、どうも、日本企業は、韓国企業を良きビジネスパートナーとして受け入れてくれていないように見えます。常に韓国に勝った、負けたと言い、勝たなければいけない敵としてしか見てくれていません。残念な話です。

 韓国企業がすべてうまくいっているわけではありませんが、日本企業は、韓国企業の躍進ぶりを事実として認め、その理由を探し、それに対する自分自身の弱点や改善策をあぶり出し、それらを改善する努力をすべきだと思います。

 しかし、これは、対韓国企業に限ったことではありません。グローバル化が進む中、目に見えないあらゆる参入障壁を温存させ、今後も外国企業を日本市場から排除するという戦略が、日本の産業に成長をもたらすということは決してありません。ここに、現在の日本企業の大きな問題点があると思います。

 事実、日本の産業界は悪化の一途をたどっているように見えます。シャープを筆頭に、日本企業に関する明るい話題はほとんど聞こえてきません。これは最近に始まった話ではなく、失われた10年や20年のように、長年にわたり繰り返してきた話です。

 それは、日本企業の経営者が業績悪化の根本原因を十分理解した上で、適切な対策を講じていないからではないでしょうか。私は、根本原因は、常に「自分は悪くない、周りの状況が悪いのだ」と言い張る日本企業の「傲慢さ」にあると考えています。まずは、つまらない自尊心を捨て、謙虚な気持ちで冷静にビジネスに向き合うべきだと思います。