「手をかければ良くなる&大量生産」を両立させる
2020年11月にJAならけん西吉野柿選果場でシステムの組み立てを終えた新しい自動選果機は、従来の5画面計測に下面計測部を加えて柿の底にある虫食いや傷みも自動認識し、かつAIの支援で自動選別する。つまり従来システムでは作業前に一手間添えられていた作業者の判断もシステム側に担わせようというのである。「ほぼ無人・完全自動化」といってよい。
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掲げている目標は、4系列48人が必要だった作業員を、同じ系列数にした場合は8人に減らすというもの。人件費ベースでの削減効果は1シーズンで5600万円になる。
今回の実証事業でもなら食と農の魅力創造国際大学校(県立農業大学校)や五條高校賀名生(あのう)分校(農業高校)の学生ら約40人が選果場を訪れ、最先端の設備を学んだ。「画像解析の仕組みや精度などについてIT世代らしい質問だけでなく、コスト効果についての質問もあり、最近の農業志望者のレベルの高さに驚かされました」と北田委員長は笑う。
北田哲也 委員長
すでに次の課題も見えている。JAならけんの南岡秀樹・営農販売部次長は、今回の新システムの導入を強力にサポートしてきたが、「労働力不足は目に見えている課題なのでJAとしては当然サポートしていかなければなりませんが、柿の国内需要が高いうちに“奈良の柿”のブランド力向上や販売量拡大にも新たな手を考えていかなければなりません」と語る。
南岡秀樹 次長
この地方では昔から柿は、「手をかけるほど良いものができる。だから生産量を増やすな」といわれてきた。だがほぼ無人の自動化された選果システムにより不要となった人件費と余剰労力を活用して、「より手間暇をかけて、高品質なものをより大量生産する」体制をいかに創造するか。北田委員長は「奈良独自の新品種やブランドが欲しい」と語る。
最新技術を下支えに次なる構造を創造する。そこに実証事業のもう一つの狙いがある。