日本史#5
Photo:Yuji Kotani/gettyimages

今、「くずし字」が静かなブームとなっている。大学や博物館主催の講座ではキャンセル待ちが出るほどだ。従来の歴史好きに加え、パズル感覚で解読に取り組む人が増えているという。それだけではない。ケンブリッジ大学やハイデルベルク大学といった名門校でも、くずし字解読のワークショップが開かれている。海外の日本研究者の関心が近年、高まっているのだ。そもそも「くずし字」とは何か。德川記念財団の研究員の木村遊氏に解説してもらった。

「週刊ダイヤモンド」2020年2月25日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの

「古文書」とは
伝達のために文字が書かれたもの

 私たちが過去の真実を知るための大切な材料が「古文書(こもんじょ)」です。

 歴史をひもとく材料は、遺跡や伝承など有形・無形のさまざまなものが存在しますが、古文書は「文献資料」という分野に分類されます。『万葉集』などの文学作品や日記も同様に「文献資料」です。「古文書」はこれらの総称と思われがちですが、実は歴史学という学問上ではもう少し細かな定義があります。それは「特定の対象に意思を伝達するための手段であり、その産物」です。つまり「差出人が受取人へ何かを伝えるために書いた文書」が「古文書」なのです。

 この定義を踏まえると、「特定の相手を対象としない」日記や文学作品は古文書には含まれず、いっぽうで、伝達のために文字が書かれたものであれば、紙でなくとも、木や布でも「古文書」といえます。

くずし字は今も
身近なところに存在する

 さて、何かのきっかけで古文書を読んでみることになったとしましょう。そのときに大きな課題となるのが、ミミズのぬたくったような形の「くずし字」です。

 筆で文字を書くときに、「一筆書き」のようにできるだけ画数を少なく書いた方がラクですよね。そのようにして画数の多い字を崩して書いたものがくずし字です。次の字へどのように続けるかによって形も変わってきますし、書く人によってはクセが強いものもあります。同じ字でもいろいろな形が存在します。

 くずし字は意外と日常の身近なところに今も存在しています。