日常でもビジネスでも何が起こるか分からない時代。こうした時代を乗り越える唯一の手段が「歴史」だ。歴史に学ばない手はない。歴史研究というのは日々、新たな発見が生まれているが、「教科書で新説を採用する場合は、10年以上の慎重な検討を要する」(山川出版・曽雌編集長)という。そのため研究者間で主流の説と教科書ではタイムラグが生じる。本稿ではそのはざまにある幾つかの説を紹介しよう。
さよなら「1192つくろう」…
鎌倉幕府の成立はいつ?
源頼朝が征夷大将軍に任ぜられ、鎌倉幕府の開始とされてきた「1192年」。
20年以上前に学生だった人は、当時もっとも有名な暗記法「1192(いいくに)つくろう鎌倉幕府」という語呂合わせを覚えているかもしれない。
しかし近年の教科書ではこのあたりはぼかされている。何をもって「幕府成立」とするのか、そもそも「幕府」とは何なのか、多くの説が飛び交い鎌倉幕府成立の解釈が定まっていないためだ。「鎌倉幕府」という概念が使われ始めたのも明治以降だという。
1192年に確かに征夷大将軍に任命されたが、それ以前の1185年には、平家を滅ぼした頼朝が「守護や地頭を任命する権利」を勅許で得ている。これによって関東中心だった頼朝の軍事責任者としての権力は日本全国に及ぶこととなった。1185年が大きなターニングポイントであることは間違いない。しかし源平合戦からではないかという説も有力になってきており、ますます議論は白熱している。