休み明け、社長が立ちはだかった!

 正月休み明け、遅刻ギリギリで出社してきたA子は、息せき切って会社の玄関に入ろうとしたところ、「ちょっと待ちなさい」と呼び止められた。振り向くと顔半分を大きなマスクで覆い、ゴーグルの上からさらにフェースシールドをつけ、分厚い手袋をはめたB社長が仁王立ちになっていた。

 B社長はA子の前に立ちはだかると、

「正月休みに帰省しましたか?」

 と聞いた。A子は正直に

「はい」

 と答えたところ、B社長はキッパリと言った。

「A子さんは帰省したことで、新型コロナに感染した恐れがあるから会社には入れません」

 驚いたA子はとっさに言葉を返した。

「えっ?私はどこも具合は悪くありません」

 しかし、B社長はさらに言葉の語気を強めた。

「知らないの?新型コロナの潜伏期間は約2週間。それに感染していても無症状の場合だってあるんだよ。だから、A子さんは今日から2週間、出勤停止扱いとします。自宅でおとなしく謹慎してください」

 そしてB社長は、「とおせんぼ」のポーズを取った。

「わかりました。しかし出勤停止の間、私の給料はどうなるんでしょうか?」
「お給料だって?出勤停止した日は働いてないんだからカットさせてもらいます」
「そんな…私だけこんな目に遭うなんてヒドイ」
「私は朝からここに立って出勤してきた社員全員に自粛要請を守ったかどうか確認していますが、それを守らなかったのはA子さんだけです。だから帰った、帰った!」

給料カットに絶望、父のアドバイスは…

 自宅に戻ったA子は、B社長から受けた扱いに強いショックを受けていた。

「貯金はないし、ボーナスはインターネットで福袋を買いまくって使い果たした。その上2週間分の給料がカットされるなんて絶望!」

 そして、

「もし2週間後に出社しても、いきなりB社長から『君はクビだ!』と言われたらどうしよう…」

 などと考えただけで胃が痛くなってきた。

 その時だった。A子がふとスマホに目をやると、Cから着信があった。慌ててかけ直すと、

「話があるから夜また電話するよ」

 と切られそうになったので、A子は慌てて言った。

「今話しても大丈夫だよ」
「仕事中じゃないのか?」
「うん。社長に『帰省したから2週間会社に来なくていい』って言われちゃった」

 そしてB社長から言われたことを全部話した。するとCは憤慨した。

「帰省したら出勤停止に給料カットだと?まったく何て社長なんだ!」
「パパ、私どうしたらいい?」
「社長に『コロナに感染したかどうか不明なのに出勤停止にするのは会社の都合だから、休業手当を払ってください』とはっきり言いなさい」

A子は電話口で泣きながら訴えた。

「そんなの無理!社長に盾突いたら、私、クビになっちゃうよ」

 Cはしばらく考えてから、

「だったら、今私が話したことを社長にメールして、それでも『休業手当は出さない』と言われたら『労働基準監督署に行って相談します』と返信してみなさい」

 とアドバイスした。