リスクを避ける賢明さを年末年始は最少人数でPhoto:PIXTA

 日本のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策の要はマスク、手指消毒(手洗い)、「三密」の回避だ。年末年始は「密集」を避けたい。

 米国では感染爆発を経験したニューヨーク、シカゴなど十大都市の住民9800万人を対象に、感染者数と携帯電話の位置情報による行動パターンの解析を行っている。感染リスクが高い行動をあぶり出し、防疫に役立てる考えだ。

 調査結果から感染リスクが高い「ホットスポット」は、やはりレストラン、ジム、カフェ、ホテルやモーテルであることが判明。しかし、その場に集まる人数を極力減らすことで、感染拡大を抑制できるかもしれないという。

 たとえば、イリノイ州・シカゴ(周辺地域を含む都市圏の人口は約950万人)でシミュレーションしてみると、全てのホットスポットが定員を満たして稼働した場合、わずかひと月の間に330万人の新規感染者が発生すると推計された。しかし、収容人数を2割以下にできれば、新規感染者は80%以上減少し、およそ65万人に抑えられるという。

 日本では、『8割おじさん』こと西浦博・京都大学環境衛生学教授が流行初期から「接触機会の8割削減」を提唱してきたが、その的確さがリアルデータで確認されつつある。ホットスポット外での感染機会など詳細な検討は必要だが、最少人数での行動が感染制御の柱であることは間違いない。

 また国立感染症研究所のシミュレーションによると、室内の飲食では密集を避けたうえで、(1)互いに対角線上に座る、(2)席の移動はしない、(3)他のグループや従業員とむやみに接触しない、(4)短時間で切り上げる、などで感染リスクを減らせるようだ。これらを実行するとなると、やはり例年通りの忘/新年会を開くのは難しい。

 寒い年末年始は換気や手洗いがおっくうになる一方、どうしても家族や友人と“密”になる。ストレスを発散したい気持ちはわかるが、今年はテイクアウトで静かな仕事納めを心がけよう。

 隔離生活で新年を迎える羽目に陥らないように、賢明な行動で自分と家族の安全を守ってほしい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)