結婚して、子どもを産んで…
それが「普通」だと思っていた

 恋人になってからトントン拍子で話が進み、1年後には結婚した。
 
「テレビを見ながら『こういうところで式を挙げたいね』から始まり、どういう家に住みたいのかとか、『パパになったら、ママになったらこんな感じなのかな』とか、新婚のときは2人で築いていく家庭について一番夢見ていた時期だったと思います。彼も、『子どもは、目は君に似たほうがいい、口は俺かな』なんて話していました。結婚当時は2人とも子どもが欲しいという願望があったんです」
 
 それが突然変わったのは、結婚半年後に夫の友人夫婦の家に遊びに行ったことがきっかけだった。友人夫婦には子どもが生まれ、そのお祝いを持っていった。生まれたばかりの子どもを抱っこさせてもらい、ハルカさんの期待は膨らんだ。
 
「他人の子でこんなにかわいいんだから、自分の子だったらもっとかわいいに決まってる、と思ったら、ドキドキしました。でも、夫は違ったみたいで…友人夫婦の家からの帰り、急に『やっぱり子どもはいいかな』『俺には無理だと思う』と言い出したんです」
 
 それまで妊活にも前向きだった夫の言葉に、ハルカさんは当然驚いた。でも、きっと一時の気分によるものだと思っていたのだという。時間がたてば、またちゃんと同じ方向を向いて歩くようになってくれる。そう信じていた。
 
「それからは、かたくなでしたね。子どもはいらない、の一点張り。自分は収入が少ないし、私が働けないとなったら養っていく自信がないって。決定打は、実はあんまり子どもが好きじゃない、子どもが泣きやまなかったりしたら殴っちゃうかも、という言葉でした。ゾッとしました。冗談かもしれない。でも、冗談でそんなことを言う人が父親になって大丈夫なのか、って」

「前を向いて2人で生きていくしかない」

 すぐには子どもを持つことを諦められなかったハルカさんだが、かたくなな夫を見て徐々に気持ちが変わっていった。いや、「変えていった」というのが正しいかもしれない。

「子どもは1人で作ることはできません。時間をかけて子どもを諦める方向に気持ちを持っていきました」
 
 子どもは持たない。そう決めたとき、ハルカさんはもうひとつ大きな決断をした。勤めている会社を辞めることだった。