観光業界では、「若者よりもシニア層を狙え!」というのが定説である。シニア層の方が旅行に行く時間もお金もあるから、というのがその理由だ。しかし、本当にそうだろうか? 星野リゾート代表の星野佳路さんはその定説に疑問を投げかける。(構成:斎藤哲也)

旅行消費の8割は国内旅行

星野佳路(ほしの・よしはる)さん
星野リゾート代表
1960年長野県軽井沢生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程を修了。帰国後、91年に先代の跡を継いで星野温泉旅館(現星野リゾート)代表に就任。以後、経営破綻したリゾートホテルや温泉旅館の再生に取り組みつつ、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」などの施設を運営する“リゾートの革命児”。2003年には国土交通省の観光カリスマに選出された。

 日本の観光産業には、イメージと現実の間に大きなギャップがあります。

 メディアや報道の影響もあって、3000万人を超える外国人観光客(インバウンド)が観光業界を支えていると思っている人が多いかもしれません。しかし「旅行消費額」という点で見ると、外国人観光客の占める割合は、2019年で17.2%。実に80%以上は、日本人旅行者の消費によるものなのです。

 この実態を踏まえると、10年後、20年後を見据えた観光産業の課題もおのずと見えてきます。今後、いくらインバウンドが伸びても、日本人の旅行者が減少すれば、観光産業はジリ貧です。

 では、10年後、20年後に国内を観光する中心は誰か。

 それはいうまでもなく現在の若者たちです。

 ところが観光産業では、「若い人は旅をしない」「若い人はお金を持っていない」が通説となっていて、サービスの矛先もシニア層に向かいがちです。実際、「大人の休日」や「シニア割引」はあっても、「20代の休日」や若者割引はあまり見かけません。そこには、人口も減少している若者向けのサービスをつくってもリターンが少ないという思考が働いているのでしょう。

 これが悪循環を生み出していることは言うまでもありません。観光業者は「若者は旅をしない」と思うから、シニア層中心のサービスとなる。シニア層中心のサービスになるから、ますます若者が旅をしなくなる。こうした負のスパイラルに陥ったままでは、持続可能な観光業の発展は望めません。