星野佳路Photo by Kazutoshi Sumitomo

新型コロナウイルスの感染拡大が地球規模で広がったことで、インバウンド(外国人観光客)需要に依存する日本の観光業界は壊滅的な打撃を受けることになりそうだ。トップに就任して約30年。幾度も経営危機を乗り越えてきた星野佳路・星野リゾート代表に、今回のコロナショックの影響と、有事にこそ実践すべき「宿泊経営の鉄則」について聞いた。緊急特集『倒産連鎖危機』では、コロナショックを発端に経営危機に陥る企業・産業の実態を明らかにしてゆく。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

新型コロナ危機で苦戦する
宿泊施設の「四つの要素」

――新型コロナウイルス感染の収束の見通しが立ちません。突然のインバウンド需要激減と日本人の自粛ムードで国内の観光市場は壊滅的な打撃を受けることになりそうです。星野リゾートには全国に多様な宿泊施設があることから、「日本の観光業界の縮図」であるともいえます。現状について教えてください。

 昨年12月あたりから嫌な雰囲気になり、屋形船でコロナの感染者が出たあたりから、旅行を控えた方がいいのではないかという感じになってきました。星野リゾートの施設の中でも、不振な施設と好調な施設がまだら模様になっています。

 星野リゾート全体のマーケットで見ると、業績が悪化している施設には「四つの要素」があります。

 一つ目はインバウンド(外国人観光客)の比率が高いこと。インバウンド依存度の高い施設の落ち幅は非常に大きいです。二つ目は、都会にあること。ビジネスマンユースやイベントユース、都市観光ユースの落ち込みが響きます。三つ目は(緊急事態宣言が出された)北海道にあること。最後の四つ目は、エージェント経由で予約する団体旅行が多いことです。

 団体旅行はレンタカーなどを使わずお任せで旅に出られる最高の商品なんですが、ターゲットが感染症に不安を抱きがちな60~80代であることもあり、影響を受けています。これらの四つの要素の掛け合わせで、宿泊施設の予約状況が変わってきています。

 コロナの影響を受けているといっても、実はインバウンド激減ばかりが要因ではないのです。社外秘のブッキングデータ(予約データ)をお見せしますので、特徴的な動きをしている五つの宿泊施設について解説しましょう。全く違う動きをしているのが明らかになりますから。