強化ポイントを探る
9パターン

 自社が、製品力、顧客関係力、運営力のうち、どの分野に強みがあるかわかったら、次に強化する能力を考える。
 打つ手は9パターンある。

【製品力が強い会社】
1.製品力を強化する
……もともと製品力の強い会社がその特性を強化して、お客様自身が探して買うような圧倒的な製品をつくる。そうすれば販促も不要になる
2.顧客関係力を強化する……製品力の強い会社がこれまでの顧客のニーズに特化した製品をつくる
3.運営力を強化する……製品力の強い会社が運営力を強化し、コストダウンを図る。よい製品でコスト競争力もあれば、シェア拡大を狙える

【顧客関係力が強い会社】
4.製品力を強化する
……顧客関係力の強い会社が、製品力を強化するとクロスセル(同じお客様に別の製品も売る)が容易になる
5.顧客関係力を強化する……もともと顧客関係力の強い会社が、予算を投入して顧客関係をさらに強化すれば、お客様の囲い込みが徹底し、離脱が出なくなる
6.運営力を強化する……顧客関係力の強い会社が、現場の改善によってサービスを強化すれば、お客様の信頼がさらに高まる

【運営力が強い会社】
7.製品力を強化する
……運営力の強い会社がよい製品を安く出せれば、競争力が盤石になる

8.顧客関係力を強化する……運営力の強い会社が顧客関係を強化すれば、固定客の強化
が図れる
9.運営力を強化する……もともと運営力の強い会社がさらに現場の改善、ローコスト経
営を実施する

 ワークマンの場合は、「運営力の強い会社」が「製品力を強化する」を考えた。

 もともと運営力が強かったが、それだけでは将来性がないので、製品開発で価値を生むべきだ。運営力と製品力の双方が強くなれば、負けるリスクは低くなる。

 本業以外の余計なことを一切「しない経営」によるローコストオペレーションを盤石にしつつ、他社が5年間は追随できないダントツ製品を開発できれば、知見のない新業態でも勝ち抜ける。

 そうした考え方は、ワークマンの企業理念の「機能と価格に新基準」にも一致する。ひと言で言えば、驚くような高機能製品が驚くような低価格で買えることだ。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。