「長時間透析の理想は8時間です。1回あたりの透析時間は長いほど、体内に蓄積した尿毒素をより多く除去することが可能になります。それにゆっくりと時間をかけて透析を行うことで体液バランスの補正をより優しく整えられるし、慢性的な尿毒素除去不足や体液バランスの破綻を防げるので、透析患者の合併症を回避する確率もぐっと高くなります。余命が長くなるとも言われています」

 週末の昼のほとんどを透析に費やすのはもったいないが、医師の説明には説得力があった。24時間365日休みなく働く腎臓は偉大だ。その働きを、テクノロジーによって代替することで「自分は生かしてもらっているのだ」とヨシアキさんは感謝している。

 数年前、そうした思いが、さらに強くなる出来事があった。居住する地域が数十年に一度の豪雨に襲われ、ところどころで土砂災害が起きて町は孤立。ヨシアキさんが通う病院でも停電と断水が続き、貯水タンクが空になってしまったのだ。

 透析の命は水と電気である。電気の方は、自家発電で対応できたが、水がなくなってしまうのは困る。透析患者は、1回の透析で1人当たり平均120リットル以上の水を使用する。120リットルは500ミリリットルのペットボトル240本に相当する。

 貯水タンクが空になったことを知り、ヨシアキさんは緊張した。一体、自分たちはどうなってしまうのだろう。しかし、なんとか救われた。炎天下、給水車が届けてくれた水を男性職員が総出でバケツリレーし、貯水タンクに水を運んでくれたのだった。

コロナ感染のリスクを減らしたいが
近隣に在宅透析対応施設はない

 ヨシアキさんの住む地域は、これまで大きな自然災害に襲われたことはなかった。それだけに、数年前の豪雨災害は、透析患者がいかに多くの人たちによって守られているのかを実感する機会になった。

 実は、週3回の通院がつらすぎて、ヨシアキさんは一時期、「在宅透析」に切り替えたいと考えていた。在宅透析なら自宅で、好きな時間に毎日でも透析治療ができるし、体調もだいぶよくなるに違いない。薬も減らせるし、食事制限も緩和できる。…いいことだらけだと思ったが、豪雨災害を経て変わった。

(もしあの時、自宅で透析中に被災したら大変なことになった)と考えたのである。

「施設透析であれば医師も看護師も臨床工学技士もいるし、断水の時にはバケツリレーをしてくれるスタッフもいるから、安心して治療できる」