その安心感は変えがたい。それに第一、ヨシアキさんの地域には在宅透析に対応してくれる病院はないので、在宅透析を受けるには、可能な地域に移住するしかないのだった。

 こうして、感謝の気持ちを抱きつつ、病院での透析治療を受けてきたわけだが、昨年、事情が一気に変わった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックだ。「基礎疾患がある人は重症化しやすい」と知り、パニックを起こしそうになった。

 病院はもちろん、精いっぱいの感染症対策をしてくれている。だが、万全の注意を払っているはずの病院や高齢者施設でも集団感染が起きており、安心はできない。

「在宅透析なら、病院に行くのは月に1~2回で済むので、感染リスクを大幅に減らすことができる。でも、家で何かあったらと思うと不安は大きい。研修を受けて、自分で穿刺できるようにならないといけないが、上手くできるかどうかわからない。対応してくれる病院がある地域に引っ越すのは相当な覚悟がいる。近隣に、在宅透析に対応してくれる病院があって、いろいろ相談できたらどんなにいいだろう」

 現在、日本にいる33万人以上の透析患者のうち、在宅血液透析を受けている患者はわずか700人ほど。対応している施設は大都市圏を中心に100軒ほどしかない。

 日々、感染の不安に苛まれながら、ヨシアキさんは今日も透析治療を続けている。

※本稿は実際の事例・症例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため患者や家族などの個人名は伏せており、人物像や状況の変更などを施しています。

(医療ジャーナリスト 木原洋美、監修/腎内科クリニック世田谷〈東京都〉院長 菅沼信也、看護師・透析技術認定士〈青森県八戸市〉 中野雄宇)