
20年間続いた
不良債権処理時代の終焉
2019年12月に金融検査マニュアルが廃止されたことは、銀行の歴史において、一つの時代が終わったことを象徴している。
言うなれば、20年間続いた不良債権処理時代の終焉(しゅうえん)だ。この20年間で金融行政はかつての大蔵省時代の裁量行政から脱却した。銀行業界は内部管理の規律を高め、日本の金融は世界の信頼を取り戻した。何より、不良債権問題を克服したことは歴史的にも評価されるべきだ。
ただ、失ったものも大きい。不良債権処理のために、米国から持ち込み、日本仕様として厳格化した融資の引き当て・償却基準(金融検査マニュアル別表)を20年間も硬直的に運用した結果、銀行としての本源的価値であった「企業価値を見る力」を失った。