今年3月、金融庁が前代未聞の施策に着手した。銀行の財務健全性を損ないかねない大口融資先のリスト化を始めたのだ。特集『銀行再編の黒幕』(全16回)の#6では、金融庁がなぜ今、盤石のメガバンク経営を警戒するのか解き明かす。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、田上貴大)
準メインにまでヒアリング
金融庁でも“緊急アラーム”
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化して以降、金融機関は産業界を支えるべく、企業の資金繰りを支援するための緊急態勢に入った。だが、金融界で緊急アラームが鳴り響いているのは銀行内部だけではない。
実は、金融庁でも時期を同じくして、「これまで行ったことのない」(金融庁幹部)施策が講じられている。今年3月、大手銀行のモニタリングなどを所管する総合政策局が、銀行の問題融資先リストの作成に着手したのだ。
金融庁は、メインバンクの審査部のみならず、準メインに向けてもヒアリングを実施し、融資先に対する見方や融資方針について詳細に確認している。リストの中身は記載企業も含めて都度更新されており、氷見野良三長官以下、金融庁の限られた範囲内で共有されているもようだ。
これまでも金融庁が個別の問題融資先についてメガバンクに迫り、不良債権処理などのしかるべき対応を求めた例は幾つもある。しかし、大口融資先をリスト化までしたのはこれが初めてとみられる。