ロブスターをテーマにした電子音楽パーティーPhoto:VCG/gettyimages

【シドニー】オーストラリア人のシェフ、サム・ヤングさん(31)はクリスマス休暇中に家族が集まった際、大皿に盛ったロブスター・ロール(ロブスターの肉と野菜などをロールパンに挟んだ料理)を用意した。翌日にはガールフレンドが作ったオランデーズソースを添えて食べようと、ロブスターをさらに1尾網焼きにした。

「オーストラリアでロブスターを食べるのがこれほど安価だったことはない」とヤングさんは話す。最近働いていた期間限定の高級レストランでは、1日に40尾ものロブスターを調理した。「どのテーブルの客にもロブスターを注文するよう勧めた」

 中国は昨年11月、両国の貿易摩擦を受けて豪産ロブスターを輸入禁止にした。それ以来、オーストラリア国内には地元の甲殻類があふれかえっている。

 それがあまりに多いため、当局は漁師が水揚げしたロブスターを埠頭で直接一般の人に販売できる上限数を引き上げた。海辺から離れた地域でも、取れたての生きたロブスターが出回るようになった。シェフたちは新作のロブスター料理を試している。これまで実験するにはぜいたくすぎる食材だった。また、アマチュアの料理人も低価格に背中を押され、自宅でロブスターを調理し始めた。

 オーストラリアで最高品種とされる「ウエスタン・ロック・ロブスター」は通常、95%が輸出され、その大半が中国に向かう。中国の消費者はロブスターの赤い色を珍重し、最も高い代価を払うためだ。中国市場から締め出された今は、多くのロブスターが国内で1年前の半値程度で売られている。スーパーマーケットの中には1尾約1500円の小型ロブスターを目玉商品にする店もある。