歴史ある総合病院
「ハダッサ医療センター」を訪問してみた

 まずは、筆者が住むヘブライ大学の寮から徒歩5分のところにあるハダッサ医療センターを訪問した。ハダッサ医療センターはエルサレム最大手の病院で、その設立は1912年、エルサレムがまだオスマン帝国統治下にあった時代にさかのぼる。

 1948年の第一次中東戦争ではこの地を巡る攻防戦が繰り広げられ、2005年にはノーベル平和賞候補にノミネートされたこともある歴史ある総合病院である。

ハダッサ医療センターハダッサ医療センター Photo by Yuki Tokunaga

 イスラエルの公共施設は総じて厳重な警戒下にある。

 まず入り口でアポイント先を聞かれ、入館を許された人だけが身体・持ち物検査を受ける。アポイント先はなかったが、「コロナワクチンについて聞きたいことがある」と正直に言ったらあっさり通してくれた。

 病院内には意外に人が少なく、全体的にガランとしていた。受付でワクチンの接種場所を聞くと丁寧に教えてくれたので、その方角に進んでいった。すると医師数人がベンチに座っているのに出くわした。

 まず、英語で話しかけると、ぶっきらぼうに「英語は話せない」という。

 イスラエルで英語を話せない人々は少ない。しかし、唯一の例外は国内のユダヤ系住民の3分の1近くを占めるロシア語話者住民である。試しに、英語からロシア語に切り替えると、対応がガラッと変わり、細かく状況を教えてくれた(特に高齢のロシア人に英語で話かけると「塩対応」となることが多いが、ロシア語で話しかけると人が変わったかのように丁寧に接してくれる)。

 この医者が言うには、ハダッサ医療センターでは慢性的にワクチンが不足しており、筆者が訪問したその日もワクチンがなく、しばらく入荷もないとのことだった。また、仮に入荷があったとしても規則通り優先接種対象者のイスラエル国民しか受け付けていないことも教えてくれた。

 貴重な休み時間を割いてくれたことに感謝をして立ち去ろうとすると、「もしワクチンが必要ならアリーナに行ってみたら?」と教えてくれた。アリーナとは、エルサレムにあるスポーツスタジアムで、バスケットボールの大会などが開かれる競技施設だ。

 そういえば、数日前に地元の新聞に「エルサレム・アリーナにワクチン接種所を開設」という記事があったのを思い出す。何の利害もない私にここまで丁寧に教えてくれた彼に改めて感謝をして病院を出た。