より迅速な
唯一の解決方法

 一方、それよりもはるかに迅速かつ効果的に、民間および現在の法制度の利用だけで中堅・中小企業に資本性の資金を入れる方策が、以下の「3つのステップ」で実現できる。

 1.まず、銀行が地域のコア企業と考える融資先に対して、コロナ禍による資金繰り難や業績の一時的な悪化に相当する分の融資を更に継続する。

 先に述べたように、既に金融検査マニュアルは廃止され、引当方針は各行の経営判断に委ねられている。例えば、ある地域の銀行等が、「地元の中小企業に対して将来を見据えた支援をし、業績不振先であっても再生支援を強化して融資を続ける」という経営方針を取ったとすれば、実際の営業現場でどのような工夫をしてそれを実現しているか次第で必ずしも直ちに不良債権に分類する必要はないのである。その点を改めて金融庁が確認する必要がある。ただし、これも先に述べた通り、実現性の高い経営改善計画を立案することが条件であることは言うまでもない。

 2.次に、コロナ禍が一段落した段階(例えば2022年1月時点)で、各行が当該融資先の正常収益力を確認し、償却前利益の10年分以上の過剰債務になっている場合は、その分の債務免除をするか、あるいは、当該貸付債権を時価で民間の投資ファンドに売却する(銀行は売却損の分を損金算入可能である)。

 投資ファンドなどは買い取った貸付債権を株式に転換する(DES)か、相当額の債務免除をして時間をかけて回収すればよい(DPO)。DESはもちろんだが、銀行や投資ファンドによる債務免除は、債務免除益の計上を通して資本性資金の投入と同じ効果がある。その一方、国や銀行が無数の企業の株主になったり劣後ローンを抱えたりする必要がなくなる。極めて簡便で理に叶った過剰債務解消策と言えよう。

 3.最後に、国はこの措置によって自己資本が毀損(きそん)した銀行などに対して公的資金を投入する。

 2020年6月、改正金融機能強化法が成立した。そのコロナ特例措置によれば、公的資金申請期限の延長(2026年3月まで)と資金枠の拡大(15兆円)がなされ、優先株に加え劣後債・普通株も可能になり、配当利率も低く抑えられる。何よりも、従来申請に際して課されていた収益目標策定・経営責任の明確化が不要になっている。金融機能強化法による公的資金の申請は2026年3月までであり、そうすると、銀行は、2025年3月期決算までに抜本的な不良債権処理を行い、自己資本の不足を確定させておく必要がある。そうすると、実質的にはあと3期しか余裕がない。

 なお、マクロ的に言えば、1990年代後半から2000年代前半にかけて、政府は、5つの根拠法に基づき合計約13兆円の公的資金を銀行に投入した経緯がある。今回の15兆円はそれに匹敵する規模であり、企業の過剰債務問題の解決および銀行の不良債権処理には十分な額であると思われる。