マークはこう言う。

「私が保護者や住民からバッシングや嫌がらせを受けたとき、真っ先に声をあげて弁護してくれた1人は、実はクラスで最も保守派の生徒だった。いろんな政治信条の生徒から、今も変わらずメールが来るよ」

 マークのフェイスブックには、住民から嫌がらせのメッセージが何度も書き込まれたが、彼はメッセージをブロックしたり削除したりはせず、トランプ支持者たちと対話を続けた。

トランプ支持者に見える
「人種差別」の病根

かつてマークが住んでいた、北ミシガンの街の2020年秋の風景かつてマークが住んでいた、北ミシガンの街の2020年秋の風景

 いったい彼の何が、そこまでトランプ支持者たちの逆鱗に触れたのだろうか。「根っこにあるのは、ひとことで言えば人種差別だと思う」とマークは言う。

「白人の中には、2008年にオバマが大統領に当選した瞬間、まるで冷水を浴びせられたかのようにショックを受けた人々がたくさんいた。とうとう黒人が大統領にまでなってしまった、しかも2012年に再選され、2期目までもと――。『このままでは、自分たちの既得権益が有色人種に奪われてしまう』という、リアルな危機感だったと思う。白人至上主義者の暴力行為を断固として強く否定しなかったトランプは、そんな彼らにとって白人優位の考え方を肯定できる、格好のよりどころだった」

 それまでにも、マークは白人の間で飛び交う人種差別の発言を数え切れないほど耳にしていた。

 デトロイト近郊のディアボーンに住んでいた頃、自宅を売りに出すと近所の白人男性が「まさか黒人やアラブ人に家を売ったりしないよな」と話しかけてきた。「いや、誰でも最初に支払いをしてくれた人に売るよ」とマークが答えると、「それはダメだ」と反対された。「黒人やアラブ人が、これ以上このブロックに増えるのは困るんだよ」とその男性は言った。ディアボーンは、全米でも有数のアラブ系住民が多い街にもかかわらずだ。

 北ミシガンは2016年の選挙でトランプ当選の票田となった地域だが、そんな中でマークのように自他共に「プログレッシブ(進歩的な政治概念を持つ者)」な存在として生きると、日常生活は摩擦なしではいられない。