「開示のための開示」に
してはならない

 こうして見てくると、非財務情報開示を単に制度対応ととらえることが的外れなことがわかります。基準や手続きだけを重視して、ステークホルダーの自社に対する理解を補うという本来の目的を見失えば負担でしかないけれど、経営者以下が本気で取り組めば、自社の来し方行く末を示す海図にもなる。義務感に囚われるのはもったいないですね。

関口その通りです。ステークホルダーに資する非財務情報を開示するには、自社のリスクやオポチュニティについての取締役会での活発な議論が前提となります。それを抜きに小手先の対策を取っても、納得も共感も得られません。これを裏返せば、非財務情報開示への真摯な取り組みが、コーポレートガバナンスの高度化に貢献することにもなります。開示のための開示にしないことが大切です。 

園田実効性の高い取締役会をつくリ、それを率いて、持続可能な価値創造の絵を描けるのは経営者だけです。その意味では経営者の責任はますます重くなり、これまで以上に高い意識と能力が求められます。非財務情報開示は、サステナビリティ時代における経営者の必修科目だといえるでしょう。

関口企業報告をめぐる世界の動きは目まぐるしく変化し、ここまでやれば十分ということがありません。日々キャッチアップすべき情報があり、それを自社に引き寄せて考えて発信していかなければならないので、真剣にやろうとするほど負担が大きいのも事実です。

 そこで、あずさ監査法人では開示高度化推進室を設置し、企業報告をサポートする体制を強化しました。たとえば有価証券報告書と統合報告書の2つを比較評価して、開示情報の過不足について適切なアドバイスを行うといった、監査法人ならではのサービスを提供していきたいと考えています。

 また、非財務情報の開示が拡大するに伴い、信頼できる第三者による保証のニーズが高まることは間違いありません。手法や手続きなどの課題は少なくありませんが、社会の要請に応えられるよう、保証業務の提供に向けた準備もしっかりと進めていく予定です。

企画・制作|ダイヤモンドクォータリー編集部